11-3 『吸魔晶石』の行方③
カーバンクルを増やすのも良いが、それよりも、カーバンクルのバリアの性能の確認をしたい。
「『フリーズブリーズ』」
冷風を生むだけの魔法、『フリーズブリーズ』。
まずはこの魔法で防御範囲を確認することにした。
バリアは目視できないので、目視できるような実験を行う。
水を撒いた土の上にカーバンクルを置き、カーバンクル目掛けて『フリーズブリーズ』を使う。
カーバンクルはバリアで魔法を防ぐが、バリアの影響範囲外で防ぎきれなかった分、地面に霜柱が立つ。
この霜柱が、おおよその防御範囲を示す基準となる。
こうやって検証した結果、魔法を防ぐバリアは、カーバンクルを中心に半径1mしか効果が無かった。
腹か胸のあたりにカーバンクルを括りつけておけば全身を守れるかもしれないが、肩の上では足元がやられるね。
発動箇所の変更はできないようで、額の石を中心に守る事しかできないようだ。
これは意外という訳でもなく、カーバンクルが自衛の為に使う能力と考えればそんなものだろう。
カーバンクルのサイズはやや大きく60㎝ぐらいだ。
自分の体の3倍も防御するのであれば、本人にとっては有用有能な防御手段だろうね。
次に確認するのは、防御力。
的の近くにカーバンクルを置き、的を守らせてみる。
「お前には当たらないから、そこは安心してね」
「グゥッ!?」
カーバンクルは攻撃される的の近くに居る事で、かなり怯えている。
今にも逃げ出そうとしていて、辺りをキョロキョロと窺っている。
「いくよ! 『マナボルト』」
まずは基本のマナボルト。
普通に当たれば的は粉砕、木っ端みじんになるんだけど。
「おお。まさか、無事だとは」
バリアに阻まれたマナボルトはそこで霧散し、完全に防がれる事となった。
その後の数日をかけて検証したが、防げない魔法は無かった。魔法相手であれば、ほぼ無敵の防御力を持つようだ。
持続時間については、防御力のついでに確認しておいた。
維持可能なのはおおよそ1分。
そしてそれだけ使わせると、しばらく動けなくなる。失神しているのかもしれない。
基本的に30秒と思っておいた方が良さそうだ。
なお、「発動する時間を短くすれば複数回使えるようになるのでは?」と思ったが、そうでもなさそうだ。
どれだけ使っても、半日後には再使用が可能になる。
どれだけ使っても、半日経たなければ使用できない。
カード能力と同じような、そういう仕様のようである。
あと、細かい仕様としては、カーバンクルはバリア展開中は動けない。俺とかが動かすのは可能。
これは防御力関連の話だけど、物理防御は一切できない。放り投げた小石は素通りするし、光や風を通すのも当たり前。あくまで魔法を防ぐ能力のようだ。
そして、使っている時は額の宝石が光る。これも俺のカードに近い仕様だが、この額の石に他の誰かが魔力を通したところで反応しない。光らない。カーバンクル本人の魔力以外は受け付けないようだ。
10日かけて分かったのはそれぐらい。
どの程度の実用性があるかは考えないとして、ここまでの調査から全くの無価値という事は無さそうだと分かった。
ならば、ちょっとした保険程度に増やしてみたいね。
で、他に何かできる事は無いか考えてみよう。
増やさないとできない事も多いし、吸魔晶石をこれ以上使いたくないから、繁殖で増やせるなら普通に増やしたいよ。
まずは普通の兎を相手に繁殖させてみるよ。