1-11 戦利品の少女①
デミゴブリン。
今まで引かなかったのは運が良かったからか、ただ俺が認識していなかった事が災いしたのか。カードの仕様かどうかは知らないけど、ここまでは見てなかったよ。
とにかく、そういう種族もいるという事だ。
俺は嫌な気分になるのを押さえられず、もう少しゴブリンの数を減らすのを続けるため、いや、八つ当たりの相手を求めてゴブリンの集落を監視しに戻った。
人間とゴブリンの交配に対し、かなりの嫌悪感を抱きながら。
子供4匹が居なくなったことで、集落に残ったゴブリンが騒いでいる事を期待したが、そんなことは無かった。
放任主義なのか、デミゴブリンはゴブリンではないので扱いが悪いのか、それとも子供が遅くまで戻らないのも日常だったのか、集落の様子は平常運転。しばらく経っても変化は見られない。
子供を探して少数で行動するゴブリンはいないものかと期待していたが、そんな都合の良い話は無かった。
よく分からない、黒い感情が胸の奥に溜った気がする。
あの捕まっていた人間を見た時にも抱いた気持ち悪さを濃くした感情だ。
自分の中にある、思い出せない記憶が何かを叫んだ気がした。
俺が集落の監視をして、そろそろ引き上げるという時間。
集落へと帰還するゴブリンの一団を発見する。
こいつらは朝ごろに出ていった集団だ。あの時は手を出せないと見送った連中だ。
しかし、出ていった時から数を減らし、10匹のゴブリンは3匹のゴブリンに数を減らしている。
そして戦利品を連れていた。
「んー! んんーー!!」
それは、人間の少女だった。
年齢的には俺より若いか。10代半ばだと思う。
彼女は俺の服よりもボロい服を着ていた。布面積の小さい恰好、胸と腰のあたりを覆っているだけとも言う。森を通るときについたのだろう、露出した肌には擦り傷が多くできていた。
手を縛られ猿轡をかまされた彼女は、後ろから付いてくる槍を持ったゴブリンに追い立てられながら自分で歩いている。
おそらく繁殖用。
死んだ方がマシという目に遭わされる少女。
それでも今はただ死にたくなくて、生きるために従っているんだろうな。
俺は少し考え、彼女を助けることにした。
ただし、姿は見せない方向で。
今のところ、人間と仲良くできるかどうかは未知数で、俺のカード能力はどんな扱いをされるか分かったものではない。
与える情報は最小限にして、ゴブリンを狩るだけにしよう。
「夏鈴。狼だけでどうにかしてくれ。細かい部分は任せる」
先ほど召喚した草原狼は戻していない。戦力的には十分だ。
草原狼は個体能力でゴブリンよりも強い。敵がゴブリン3匹だけなら、これで間違いなく勝てるだろう。
問題は、服を着た夏鈴の姿を見られる可能性だけど。狼たちの指揮をするだけなら構わないよな?