11-2 『吸魔晶石』の行方②
カーバンクル。
当たり前だが、元が兎なので黄色くないし、カレーも食べないし、ビームを撃たない。
ただ、防御魔法っぽい何かが使えるだけのモンスターだ。
それも、1日2回ぐらい。
「育てれば使えるようになるのは分かるんだけどな」
はっきり言って、兎なんて最近はほぼ出番が無かった。
ただ「もったいない」の精神で解放せずにとっておいたものがここで活きてきただけだ。
当初は草むしりをさせるつもりで使っていたけど、畑の管理をゴブニュート達に任せた事で、召喚する事もほぼ無くなったのだ。
現在、カーバンクルの☆は4つ。
成長させるにはわりと時間がかかりそうだ。召喚しっぱなしにして、本人にも頑張ってもらう方が良さそうだ。
「まずは魔力を鍛えるために、その防御魔法――バリアでいいか。バリアを出来るだけ使うように。あとは適当に草でも食べていて」
「グッ!」
兎の鳴き声は、わりと低く重い。
可愛くない鳴き声だが、得てして動物とはそんなものである。人間の感性に合わせて品種改良された個体でもないし。
穴兎ベースの茶色い毛は撫でるとモフモフで気持ちいいけどね。そこはちゃんと洗って手入れすれば大丈夫。
ちょっと獣臭いが、草原大狼とそこまで変わらないし、小さい分だけ臭いの量も少ないので、あまり気にならないレベルだ。
で、サイズはそこそこ大きいタイプなので体重も5㎏ぐらいとそこそこ重い。肩に乗せて運用するのはたぶん無理だね。
そうなんだよなぁ。
運用方法まで考えないと駄目なんだよ。
他にはこのカーバンクルを増やす方法を考えるだけだ。
まぁ、方法を考えるというか、単純に繁殖させるだけなんだが。
兎の成長は早く、1年あれば20倍まで増える事もある。
下手をすると、もっと増えるらしい。
カーバンクルになった事でどこまで増えるか分からないが、増やすにしても注意が必要だろう。
下手に増やせば無制限に繁殖し、草原を食いつくすのが兎という生き物である。
イギリスでは天敵の狼や狐を狩りすぎて大繁殖し、森が消えたというほどだ。
繁殖制限は必須である。
あとは番をどうするかという話。
単性生殖じゃないからね。お相手を用意する訳だが。
「んー、雌かー。じゃあ、雄の兎を使えばいいのか?」
兎でも繁殖するのか、それともカーバンクルをもう1体作らないといけないのか。
もし兎を使った場合、2世の能力は引き継げるのか、そのままなのか減衰するのかなど、考えるべき事は多い。
兎はいまのところリーダー種がいないので、カードが増えた場合でもスタックできず、数を増やしても運用できるかどうかには不安がある。
最悪、額の石を回収すれば吸魔晶石になるのかなどとも考えてしまう。やりたいとは思わないけどね。
初めての事は全部が手探りだ。
いくら考えた所でらちが明かず、やってから検証するしかない。
まったく。
メイジ系モンスターなら楽で良かったんだけどね。