10-26 今後の方針
男女の仲になれば、関係性も変わってしまうのが当然。そう思っていた。
しかし、俺と三人娘の関係は以前とそこまで変わらず、ホッとしている。
こんな事を言えば臆病者だと笑われかねないが、関係が変わる事を避けていたのだと思う。今の距離感が好きなのだ、俺は。
まぁ、だからと言って猿のようになりたいわけでもないが。
そう言えば、俺。まだ若いのに性欲が薄いな。
病気という事は無いと思うが、普通じゃないかも。10代なんて猿になってもおかしくない気がするが。
……実害が無い話だし、まぁ良いか。
越前町で戦って負けた経験をもとに、俺たちにはパワーアップ、修行パートが必要だと思った。
夏鈴はタイラントボアたちの戦いから、別のタイラントボアたちが現れた時の対処法を考えるべきだと、そう進言された。
で、しばらく人の多い街には行かないと決めた事もあり、引きこもって新しいカードを作ろうと思うわけだ。
外の話はニノマエの行商組と医者の皮を被ったジンに任せておこう。
目指すものはおおよそ二つ。
「魔法対策」と「巨獣対策」だ。
凛音たちを飲み込んだあの黒い蛇。タイラントボアはどうにかなったけど、ワクチン・オーク達がどうにかできたわけではない。
検証はこれからだが、あの魔法をどうにかする事と、その他にも思いつく危険な魔法を使われたときの対処法が必要だと思う。
それに、効果不明の大魔法。数百人を飲み込むような魔法陣を思い出すと、『吸魔晶石』の量産をした方が良いかもしれない。
そして夏鈴が想定する、こちらにタイラントボアが居ないときに別のタイラントボアが攻めてきた時の戦い方の確立。
言われてみれば当たり前だが、タイラントボアがまた攻めてくることは十分に考えられる。
難民になった越前の国の生き残りから聞いた話では、地形を利用し、土砂で埋めてから処分するのが一般的と言われたが、それを俺たちが再現できるかどうかはかなり怪しい。
俺たちは正面から戦い、勝利する方法が欲しかった。
当面はこの2つを軸に、カードを作っていこうと思う。
手持ちのカードと思いつくアイディアは、そこまで複雑ではない。
魔法対策ならTRPGやTCGではよく見かける『ディスペル』系の魔法を作る事。そしてそれが使える魔法使いを育成する事。
『吸魔晶石』の能力化が第一の手段だ。
あとは魔法防御的なものの向上する防具の作成ぐらいだな。
タイラントボア対策は、強烈な音と光で敵を封じるスタングレネードとか、鎖で対象を地面に縫い付ける魔法とかアイテムとか、そんなものを開発すればいいんじゃないかなと思う訳だが。
これらについてはアイディアだけで、実現までの道のりが見えていない事が問題だけど。チマチマ頑張るしかない。
これまで何とかなったのだから、今後も何とかなる。
そんな甘い想定はまだできず、村の防備に不安が残る。
越前の国が再興すればまだ安心できるんだろうけどね。それは何年後の話だろう。
加賀の国や、行ってないけど若狭の国とかがあの土地を併合してくれればいいんだけど。それすらすぐにどうこうできる話じゃない。
難民の問題は解決していないし、美濃の国や尾張の国、そして三河の国とかも問題は燻っている。
平和な世の中って奴が来るのは諦めるにしても、もうちょっと楽に生きたいものだね。