10-24 俺の休日・後半③
2回もやれば、なんとなくデートの感覚が掴めてくる。
気負いすぎず、いつもより一歩だけ近くにいて、時間を共有する。
その程度でいい。
会話をしなければと思うと空気が悪くなり、いるのが当たり前という空気を出していれば会話が無くても問題無い。
お互いにホストであり、ゲストである。
「自分がなんとかしなくては」と空回りさえしなければ、二人で楽しい事を探すぐらいでちょうど良い。
「何か面白い事は無い?」
「こんなのはどう?」
デートと言っても、それぐらいなのだよ。
下手に何か押しつけた方がダメージが大きい。
あとは他の女の話題を出さないとか、最低限のマナーさえ守れば大丈夫。
デートは二人で楽しむ事。それでいい。
ちなみに。分かった事と実践できるかどうかは別問題である。
最後のデートは夕方という事もあり、自宅デートだ。
秋頃は夜になると冷え込むので、外だと厳しい。室内を選んだのはそういう理由からだ。
それをデートと言っていいかどうかは知らないが、外を歩いた後に彼氏が彼女を部屋に連れ込むという展開があるので、お出かけするのではなく、いきなり最終局面。
エロい事をするわけでもないが、そもそも世の恋人同士が同じ部屋にいるからと言って常にエロい事をするわけではない。同じ屋根の下には家族だっているわけだし。部屋でイチャイチャするだけでいいじゃないか。
……それがいいんだよと言う奴も居そうだが、俺はそこまで上級者じゃないから関係ないよね。
ゆっくりすると言っても、狭い密室に二人きりというシチュエーションと、広い屋外の開放感は全く趣が違う。
莉菜と一緒に居た時は風の音や花の匂い、自然の美しさを楽しんでいたが、室内でそういった事はできない。
だったら何をするのかというと。
「創様、もっと強くして貰えませんか?」
「あー。今でも結構力を入れているんだが?」
「いえ、その方がもっと体温を感じられますから」
俺は夏鈴を後ろから抱きかかえ、その状態で夏鈴は編み物をしていた。
冬に備えて、マフラーを編むのだとか。そうだね、冬のデートなら一本のマフラーを二人で使うぐらいするよね。
うん。現実逃避は止めよう。
エロは無しだと言ったが、この状況はそこそこヤバい。
最初は耳掃除とか、定番のイベントをやってみたわけだ。
で、俺が膝枕をしてもらうとか、その程度の接触だったわけだが、交替するタイミングで夏鈴が今のようなことをお願いしてきたわけだよ。
俺は夏鈴の座椅子になったわけだ。
腰に手を回し抱きかかえているので安定感もあるよ! って、んな訳あるか!
頭の中でくだらない事を考えていないと、ちょっとやってられない。
夏鈴の体温とか、匂いとか、密接しているのでかなり危険。黄信号ではなく赤信号だ。気恥ずかしく、この状況では落ち着けない。
お互いの裸を見たりする事もあるし、だからなんだという間柄ではあるが、うん、控えめに言ってもヤバいよ。語彙が死ぬ。
前の二人で油断した俺は、最後の狩人にそのままやられましたとさ。
合掌。