10-19 飯の前に
伝令が来てさらに2時間。
ようやく夏鈴たちがやって来た。全員が大きな荷物を抱えての凱旋である。
夏鈴たちも血まみれになっている。死体漁りをしたのだから仕方がない。
タオルで拭ってはいるものの、落しきれない血の汚れで全員凄く臭い。背負っている荷物からも死臭がするので、さらに酷い臭いになる。
ついでに言えば、ディズ・オークの病原菌を全身でしっかり回収してきたはずなので、俺は飯の前にと用意しておいた風呂を親指で指し、笑顔でこう言った。
「汚い恰好で飯を食えると思うなよ。全員、まずは風呂に入るように」
ご飯の前に手洗いうがいは必須だが、ここまで汚いのなら「風呂に入ってこい」と言うのが常識だ。
ご飯を食べるときは、最低限の清潔さが求められるのである。
作った風呂は、大人数対応の露天風呂だ。
伝令の連中が返り血で汚れていたため、夏鈴たちはどうだか分からなかったが、ワクチン・オーク達は間違いなく汚くなっているし、絶対に使うだろうと思っての行動だ。
混浴だったがそんな事を気にするものはおらず、全裸になって桶に湯を掬うと少し離れた場所で頭からかぶり、綺麗な布で軽く汚れを落とす。
石鹸も固形にならず液体のままだけど、樽で作ったものがあるので、それを使ってみんな泡まみれになっていた。
もう一度湯を浴び泡を落とすと、ようやく湯船に浸かり、疲れを落とす。
体にタオルを巻いたり巻いていなかったり。全裸ぐらいで恥ずかしがる者はこの場にいないようだ。
オークのアレはかなり大きいが、俺もいちいち気にしない。女オークの胸が多乳だったりするが、オークなので性的に興奮することはない。
夏鈴たちはタオルを巻いているのでセーフである。
湯船から上がると、これまた樽に入った冷たい酒をジョッキに移し、一息に飲み干す。
疲れた体に熱いお湯を浴びるのは最高の快楽で、風呂で身を清めた後に飲む冷たいドリンクは天上の美酒だ。
飲み終えた後、だらしない顔を晒しているが、仕方がない事なのだ。
それと夏鈴たちにはディズ・オークの病気用のお薬も渡し、ついでに俺も飲んでおく。
ワクチン・オーク達は連中の病気に対する耐性があるけど、俺たちにそんなものは無いと思うし。病気対策は必須だ。
それと、タイラントボアたちの体を伝令の連中が総出で洗っているが、あれは大変そうだ。
デカいからね。手間も相応にかかるのだ。
風呂から出たら、次は飯だ。
食前酒替わりの酒はもう飲んだので、細かい事など考えず、後は食うだけ。
みんなが風呂に入っている間に飯の準備は万端だ。
どうでもいい挨拶なんていらない。
食えるようになった奴から食い始めればいい。
「さぁ、祝いの飯だ! 食うぞ!!」