10-18 もう少し待つ
ひたすら長く感じた待機時間だった。
戦闘が終わったと、伝令がようやくやって来た。
まさか3時間も待ちぼうけになるとは考えていなかったよ。
一応、伝令が遅れたのには理由がある。
夏鈴はあれから1時間程度で戦闘が終わったからと、すぐに伝令を送った。
しかし戦闘中に散り散りになった敵の一部が伝令のすぐ近くを通り、まさかの遭遇戦となった訳だ。
情報を持ち帰られないよう、そいつらを皆殺しにするために伝令は頑張って戦う羽目になった。
数が少なかった事もあり、なんとか全員倒したわけだが、まだ他にいるかもしれないと、彼らはここまで大きく迂回して移動することにした。
山の反対側から伝令が来た時には何事かと思ったが、事情を聞けば仕方が無いとしか言いようがない。
時間をかけて申し訳ないと頭を下げていたが、こんな事で責めるほど狭量ではないつもりだ。気にしないように、むしろ指示も無い中で安全優先で動くとは立派だと褒めておいた。
戦闘は圧倒的だったという事で、夏鈴たちは倒した敵から装備をはぎ取り、ついでに召喚術士の死体を回収してからこちらに来るらしい。
よってかなり時間がかかるので、俺をかなり待たせる事になるという話だ。
そのあたりは余裕があったらやっておいて欲しいと言ってあった話なので、特に問題は無い。予定通りだ。
皆の戻りがいつになるか分からないので、飯の用意などはまだやらない。
カード化を解除するだけなので、早く用意すると無駄に冷めてしまった飯を食わせる事になる。飯は来てから準備すればいいだろう。
今回もタイラントボアが圧倒するだけの戦いだったとは言え、その前にワクチン・オーク達が必死に戦っていた。
多少の不利を承知で戦ったのは戦人の矜持というものだろう。
何でもかんでも強者に任せて自分は後ろで高みの見物というのは、彼らの誇りが許さなかったに違いない。言葉は通じないが、ジェネラルがすぐに助けを求めなかったのはそんな理由だと勝手に思っている。
その結果2割以上の損害が出たが、あとで再召喚すれば済む話だし。
死んでも生き返る反則技があるから、損害は経験値のみで、ある意味ゼロである。取り返しのつかない被害は出ていない。
彼らの戦いは無駄ではなかった。
本格的な戦闘の経験を積んだわけだし、数字に表れない強さを得たのだと思う。
それに、実際に戦った彼らが敵の事をどう感じたのか、ちゃんと話を聞いてみたい。
言葉は通じなくても、何となくの意思疎通はできるので、可能な限り、多くの情報が欲しい。
敵は操られていたのかどうかとか、素で死ぬ気で戦っていたのか、そういった情報があると無いとでは今後の展開がずいぶん違う。
俺は聞き手として頑張るとしよう。