10-15 リベンジ本戦①
「そっか。敵戦力、千程度のわけが無いもんなぁ」
「あの魔法陣も時間稼ぎだったわけですね」
1000の敵を251人で打ち破ったワクチン・オーク達。
彼らは勝ち鬨を上げる間もなく、次の敵と対峙することになった。
あの大魔法で対処できないことも想定していたのだろう、町の門を開き、1000どころか万に届きかねない敵の軍が姿を見せる。
それを見たジェネラルがすぐ、俺に救援要請を行った。
「判断が速いな」
「優秀ですね、彼は」
さすがに一万近い敵を前に、おおよそ200人まで減った、しかもついさっき戦いを終え傷付いた状態で戦えると考えないのは当たり前だ。
ジェネラルの救援要請を見るまでも無く、俺は召喚を開始する。
「≪召喚≫タイラントボア」
2枚のカードを使用する。
現れた巨躯、タイラントボアたちが姿を現した。
召喚された場所が緩やかだが傾斜だったため、現れてすぐに体勢を整えるのに地響きを立てる。
変な場所に召喚したことで、タイラントボア達の機嫌が少し悪くなった。
「すまん。色々あって、山に召喚した。で、お願いしたいのは、あいつらの相手なんだけど」
俺は裸眼では米粒程度にしか見えない、しかし数が多いのでそこそこ目立つ敵軍一万を指さし、戦って欲しいとお願いをする。
タイラントボア達は味方が近くにいることも確認し、急いだ方がいいのかと、こちらに問うような視線を向けた。
俺は無言で頷き、それを肯定する。
「助かる! 飯は期待しておいてくれ!!」
するとタイラントボア達は報酬の話も特にせず、そのまま雄叫びを上げ、敵軍に突撃していった。
その後ろ姿は「勝利の宴に出す飯を用意しておけ!」と言っているようにも見えた。
俺は二頭に感謝すると、敵軍の方に視線を向ける。
ボアたちが雄叫びを上げたことで、こちらに視線を向けている者も多くいる。
奴らの視力がどれぐらいかは知らないが、1㎞は離れていてまともに顔の判別などできようはずもないなどと、油断はしない。
現在の俺たちは変装済みで、いつもの金髪セットだから見られたところで問題は無いはず。
あと、位置は変えておこう。
このまま同じ場所にとどまるのは愚策だし。別動隊が来たら怖いからね。
改めて敵軍を観察すると、兵士たちの練度はかなり向上していた。
全体的に足並みが揃っているようにも見えて、ちゃんとした軍隊が出てきたと、そんな印象を受ける。
装備の方はそこまで変わっていない。統一された金属鎧を身にまとい、部隊ごとに違った武器を装備している。
……軍隊の装備の規格が統一されたのって、近代かそこらだったような気もする。
つまり連中は中世ファンタジーではなく、近代ファンタジーか現代ファンタジーということだ。
工業化後の世界のオークだな。改めて考えると、酷いジョークだ。ファンタジーなら中世で歴史を止めておけよと、モンスターを吐き出しているダンジョンの運営者に恨み言が漏れる。
近代化といえば銃火器だけど、それらを使っている様子は無い。
敵の武器は剣とか槍とか魔法の杖とか。まだファンタジーの規格内だ。
だが、いずれ魔法銃とか、そんなものも出てきそうな予感はある。
むしろ、俺がそういったアイテムを作るようにしてみるか?
細かい話は全部、この戦いが終わってから。
先の事は、今は横に置いておく。
ここから先は追加戦力なんて無いし、観戦モードとはいえ、いつでも逃げられるように準備をしておこう。