10-14 リベンジマッチ④
「俺のカード化と同系統の能力かな? アレが狙いで、練度グダグダの指揮をした。無いか」
「どうでしょう? 私達を殺しすぎないように、わざとやったという見方はできますよね。
私達は後方にいるあれを召喚術士と判断しましたが、それも敵の装備を見てのこと。騙すために見た目だけ整えた別物の可能性もあります。完全に素人だけではバレるかもしれないから、本命は後ろに控え、前にいる者は病人で、数合わせだからいくら死んでもいいと、使い潰した。だからまだ崩れない。そういう考え方もあります。
同胞と言いますか、彼らは別の種になってもオークですからね。もしかしたら生前の交流があって仲間に引き込みたかったのかもしれません」
地面に現れた巨大魔法陣。町から敵の使った大魔法。
キャンセルしたのですでに脅威では無いが、そこからいくつもの可能性を夏鈴と二人で話す。
あの魔法が殲滅用の魔法だったと仮定するなら話は簡単。
捨て駒を使い、仲間ごと安全にこちらを倒そうとしただけ。もしくは病気を悪化させて殺すような、混戦状態でも敵だけを殺すような魔法だった。
この可能性はあまり考えておらず、俺たちはそんな事は無いだろうと結論づけた。それなら他にもっとやりようがあるし。
こっちを確実に捕獲するため、眠りや麻痺の大魔法を使った。これはちょっとあり得そうだ。
情報を抜き取るために生かして捕らえるというのなら、積極的に殺そうとしていないことにも説明が付く。殺しすぎては聞き出す相手がいなくなる。尋問による情報の抜き取りは正確性に欠けるため、見せしめを含め、聞き取り相手はたくさん欲しいだろうからね。
これはあるかもなーと、そんな事を言ってみた。
で、一番あって欲しくない可能性はなんだろうと、そんな話をしてみた結果、「精神支配魔法」ではないかという意見が出た。
俺はカード化の時に相手を殺して、その死体をベースにモンスターカードを作る。もしくは同意を得てモンスターカードに登録する。
カード化までしなくても「精神支配とかそういった魔法で代用はできるよね」と、そういう話だ。
敵をそのまま味方にできるのなら、将棋のごとく盤面をひっくり返すこともできそうだ。利用枚数制限の問題があるけど、俺も出来なくはないし。
最初は無さそうに見えたこの話、ちょっと考えてみると、実はありえそうという流れになった。
と言うのも、今戦っている連中。敵の方だけど、ガンガン死んでいるんだよね。
死を恐れていない、そんな様子である。
普通、仲間が死んでいけば徴用した一般人、民兵は逃げるものだ。勝ち目が無いなら俺だって逃げるよ。
それが未だに戦闘状態、逃げ出す奴が居ないので不思議に思っていた。千人いたんだ。一人二人逃げてもおかしくないよね。なんで逃げないんだ?
単純に種族的な理由で死を恐れない可能性があるけど、精神支配か何かをされていて、逃げるという発想が無いんじゃないかなと思ったわけだ。
病気で状況が悪くなってしまったとかそんな理由で、普段ならやらない、そんな手段に手を出したという事も考えられるよね。
頭の足りない戦い方の理由も、正常では無いから単純な戦い方しかできないとか。そんな事も考えた。
「あ、二回目」
「またキャンセルですね。創様、あれは使い捨てアイテムでは無かったのですね」
「『吸魔晶石』はアイテムだけど、消耗品では無いからね。武器や防具みたいな耐久消耗品ではあるけど」
ちなみに、魔法をキャンセルしているのは『魔晶石』から作った『吸魔晶石』という、MPドレインのアイテムだ。
思った通りの効果を発揮せず、ただ石の中に魔力を蓄積するだけのアイテムになってしまったので使ってなかったが、今回は鉄壁軍をより鉄壁にするために渡してあった。
このまま敵を全滅させてお終い。
前の方にいた雑兵700が死ぬまで奴らは戦い続けた。
最後方の300はそいつらが戦っている間に逃げ出しており、ほんの少ししか殺せずに終わる。
こちらの被害は全体の3割程度。7~80体ぐらいかな。
こうして、初戦は俺たちの勝利で終わったのである。