10-9 情報整理
とりあえず、状況を再確認しよう。
越前町を始め、俺は短期間で越前の国全体に疫病をバラ撒いた。
疫病に対する知識のない連中であれば、特に何か考える事もなく感染拡大を続けるだろう。
致死系の病気なので、感染が拡大すればディズ・オークは何事も無く全滅する可能性が高いと思っていた。
実際、最初にバラ撒いた越前町では15日程度で町を歩くオークどもがいなくなり、その効果は間違いなく発揮されている。
俺たちは病気で戦力が激減したであろう越前町に対し、更に疫病が広まるようにと、攻撃を仕掛けた。
攻撃されると思えば防備を整え、集団行動を推奨するだろうという考えからだ。
しかし攻撃は失敗、俺たちはあっさりと撃退される事になる。
敵には未知の魔法を使う召喚術士が存在し、その魔法で召喚された黒い蛇は俺たちでは簡単に対応できる強さではなく相応の準備を整えしっかりと対策を練らないと勝てないと思うほどであった。
可能ならばあの死体を回収するとか、その召喚術士をカードとして確保するとか、そういった手段を取りたいが、残念ながら、今は無理。怖くて挑めないのである。
恐ろしい話だが、あの召喚魔法を使える個体は複数存在した。
短期間で2体も現れた事を考えると、召喚術士は100体ぐらいいたとしても不思議では無い。
これにより俺たちは敵戦力の見積もりを大幅に上昇させなくてはいけなくなった。
で、予想よりも敵の抵抗が激しい事を考えると、タイラントボアを投入するだけで良いのか、そんな事を考えてしまう。
タイラントボアは切り札であり、これが通じないとなると、こちらで取り得る手段というのはかなり限られる。
あと、できれば温存したいとか、そんな考えが頭をよぎった。
しかし夏鈴の進言もあり、最悪を回避するためにタイラントボアの投入はやっぱりやる事にした。
通じないなら通じないなりに、どうにか対策を考え、新たな一手を用意しないといけないのだ。
そう考えると、腹を括るしかなかったのである。
これは悪い情報が並ぶ中で数少ない良いニュースだが、石川県こと加賀の国がディズ・オークの一部を殲滅しており、加賀の側は安全が確保されている。
たぶん疫病の事を考えていて、人が再び住めるようになるのは少し先の話だろうけど、勝っている所があるのは良い事だろうね。
さて。
問題は、5日後に行うタイラントボア2体による攻撃だ。
そしてその時はリキャストタイムの都合で今回やられた皆を再召喚できない事。
俺は何か特別な事をしなくても良いと思っていたけど、ああいう危険な奴が居るなら、何らかのフォローは必要だと思う。
夏鈴たちを温存しても、随伴要員として俺の護衛をしていた槍・弓の部隊を投入する事は可能だけど、それで良いのかと思ってしまう。
なんか、無駄にやられて終わりというオチが待っていそうだ。
準備期間はたったの5日。
何ができて、何ができないのか。
投入できる戦力を見て、改めて考えてみよう。