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10-8 ネガティブ

 今の俺は、弱気の虫が騒いでいる。

 やりたくない理由を探し、やらずに済む方法を考えてしまう。


 普段であれば、夏鈴の言葉を信用してそれに従い、上手くいかせるために他に何ができるかと考える場面だ。

 夏鈴も間違う事はあるけど、それを言ったら俺だって間違う。むしろ俺より夏鈴の方が良い判断ができている事が多い。


 最悪を想定するなら、確かに予定通り戦った方がその後を有利に進められる。

 早い段階で敵戦力を削った方が後々有利になるのは当然で、相手が対策を考える時間は増えるが、それ以上に数が減ってしまえばできる事が大幅に減るだろう。

 ここで無理を通す意義は大きい。


 それに、だ。

 タイラントボアが決定的な戦力であると思ったからこそ今回の遠征を企画したが、その前提が覆された時、俺はどうするべきかという問題がある。

 ボアを召喚すればなんとかなる、そう思っていたのに実はダメでした、そんな展開になったらどう動くのか?

 今のうちにそれを知っておく事は必要な事なのだろう。



 話を受ける方に意識を傾けてはいるが、どうにも踏ん切りが付かない。

 他の仲間に話を振ってみるが。


「お任せします」

「分かんない」

「すまん、ご主人。普段からそういうのは考えていないから……」


 普段は「付いてこい!」といって引っ張る俺の仲間は、引っ張られるのが当たり前になり、思考放棄していたようである。

 今更気が付いたけど、良くない傾向だな、これは。

 普段からもう少し先の話を振った方が良さそうだ。



 仲間の言葉を後押しにする、(こす)い考えは成り立たなかった。

 こうなると、自分だけで決断をしないといけない。


 この先の展開をいくつか考える。

 予想されていなかった敵戦力、更に上があるかもしれないリスク、病気の感染が思ったほどでなかった場合の未来は何が起きるか。

 どう考えても、蹂躙される未来しか思い付かない。

 俺の生活がどの程度守られるかなんて、考えるまでもない。潰されて消える。それだけだ。



 タイラントボアを常時召喚し続けられるなら、また違った未来があるかもしれないけど。残念ながら、俺たちの生産力ではそんな事はできない。

 この間手に入れたワクチン・オークの軍を生産に回せばなんとかなるかもしれないけど、あいつらを召喚しようとは思っていないんだよな。状況と気分的に。


 姿形がディズ・オークからあまり変わっていない連中が大量に出現した場合の周囲の反応なんて考えたくないし、タイラントボアだって神戸町を襲ったモンスターで、その成体が近くにいると分かった時の、美濃の国の反応なんて考えたくない。

 敵を味方に変えるような俺の能力だけど、周辺に能力を知らせず使う時は勿論、周辺に能力を知らせたところで、確実に軋轢を生むんだよな。最悪は俺が召喚したモンスターで襲撃を仕掛けてきたとか言われるんだ。間違いないね。



 そこまで悪い方向に物事を考えたら、ちょっとここで戦おうという気になった。

 最悪中の最悪な未来を打ち消すためにも、少し踏ん張らねばと思った。


 我ながら酷い話だと思うけど、予定は変えず、タイラントボアを召喚しようと思う。


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