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10-7 チキン

 俺たちは全滅した。

 まぁ、俺は遠くからそれを見ているだけであったが、撤退支援というか、強制的な回収作業に関わったので、何もしていないというわけではないが。


 とにかくだ。

 俺たちは、負けたのだ。





「申し訳ありません!!」

「いや、初見の魔法相手だからね。しょうがないよ」

「「「申し訳ありませんでした!」」」


 全員を再召喚した。

 すると、最初に召喚された夏鈴が勢いよく土下座する。

 他の連中はそこまでしないが、その場で頭を下げて、失敗したことを謝ってきた。


 あの場にいなかった俺がとやかく言う事は何も無いので、謝ってもらうよりも建設的な話し合いを進めたいんだけどね。



「ここまで連戦連勝、不敗だったことで油断しました。敵の戦力を過小評価していたようです」

「まぁ、一番はそれだよな。普通、敵の能力やらなんやらは不明だって言うのに、何も考えずに戦いを挑んでしまったのは拙かった」


 頭を下げる連中を宥め、反省会を始める。

 そして最初に出てきたのは、初見殺し対策の弱さと、それを怠った慢心について。

 ディズ・オークとは何度か戦ってきたけど、負け知らずだったから、越前での戦い、その細かい話を集めもせずに戦いを挑むという愚行を置かしたのは油断しすぎと言われても仕方がない。


「病気で主力もダウンしているだろうという、そんな浅はかな考えもありました。

 病気は越前町の中に広まりきっておらず、まだ動ける者も多く居るようですね。敵戦力の上方修正が必要です」


 越前町のキャパシティを考えれば、10万以上のディズ・オークが居ることだろう。

 人間の社会であれば3%ぐらいが純粋な戦力で、20%の2万体まで非常用戦力として数えられるはずだが、この常識がどれだけ通じるかは怪しい。

 種族的な違いの問題があるし、そもそも連中の社会がどんな風になっているかは知らないからね。前世情報はあくまで参考にする程度にしておく。


 人間的に考え、2万近いディズ・オークが戦力で、5日後までに半数が死んだとしても残りは1万。そのうち主力級は1500といったところ。

 うん。かなりヤバい戦力が残ってしまうわけだ。

 前回タイラントボアが蹴散らした4500の倍以上の戦力がいると思っておこう。5日後なら、ね。


 ただ、今回は病気を広めるという手段を取ったので、時間さえかければ連中は病気で死ぬから戦わずに済むし、ある程度でも弱って数が減っただけでも勝率は上がるだろう。

 これまでは時間をかけることが出来なかった戦いも、今なら時間をかけてゆっくり戦況をひっくり返していくだけで良いわけだ。

 さすがに、ここからひっくり返すのは至難の業だろう。



「いえ。もしかしたら連中が病気に対する有効な手段を見付けるかもしれません。ここはやはり、タイラントボアに助力を頼むべき場面と思います」

「その心は?」

「あれで敵の全てを知ったわけではありません。奴らが再び村に来るまでに何らかの対策を練らなければいけないので、ここで少しでも戦力を削り、その地力を暴いていく必要があると考えます」

「んー。まぁ、そうなんだけどねー」


 夏鈴は最悪を想定し、ディズ・オークが病人を隔離する程度の知恵を回すだろうと予測する。

 そして一部の主力は魔法により生き残る確率が高いだろうとも。

 とにかく、一度叩いておかないと後がかなり厳しい。

 そう言っているわけだが。


「下手をすると、タイラントボアが殺されかねないのは、嫌なんだよね」

「……そう、ですね。今回ばかりは、遠征軍と本拠地の防衛軍の差が如実に出ると思いますので……彼らでも、厳しいでしょう」


 ここでタイラントボアが叩かれるのは、かなり困ったことになりそうな気もする。

 俺は今、臆病風に吹かれてチキンな選択肢を選びそうだよ。



 俺は病気だけでもかなりの損害を与えたと思うし、時間は稼げた気もするんだけど、夏鈴は逆に追い詰められた事で自棄になるかもしれないと予想する。

 この場合、どちらが正解だろうね?

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