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10-6 越前町の攻防⑥

 相手を弱いと思っていたわけではない。

 遠距離攻撃がないと思っていたわけでもない。


 だが、「なんで越前が落とされたのか」という部分に対する考察は足りていなかった。

 ただ、これまでの成功体験から、「これぐらいは大丈夫」という甘い認識があったのだ。

 そして、然るべき結果が出てしまった。



 けん制程度の攻撃を仕掛けに行った夏鈴たち。

 彼女達は、全滅した――





 対人の戦争をほぼ想定していない越前町の作りだけど、ごく一部の例外、盗賊などへの対策はしっかりと取っている。

 町の周囲には物見櫓が設置され、外敵の侵入にいち早く対応する為の態勢を整えている。

 ディズ・オークであってもそれは変わらず、物見櫓には5体のディズ・オークの姿が見える。


 今回の作戦では、その物見櫓に対する攻撃だ。

 一つか二つでいいので、物見櫓を破壊しようとするわけだ。

 これを作った越前町の方々には悪いが、俺たちが安全に攻撃できそうな攻撃目標は外壁と物見櫓ぐらいだったのである。



 攻撃は凛音が魔法で行う。

 随伴、防御担当として終が同行する。


 攻撃は最大二回まで。それ以上は危険性を考慮し、行わない。

 一回目の攻撃があった時点で敵にも動きがあると思うが、余裕があると判断すればもう一回、こちらに寄せてくると思えば二回目の攻撃は諦め撤収するようになっている。


 他の仲間は予備選力というか、撤退支援だ。

 やや後方まで付けるが、攻撃するほどの距離までは近付かない。

 敵が出てきたらそいつらに一撃入れ、みんなで逃げる時間を作る。


 作戦は、俺から見ても特に問題があるとは思わなかった。





 遠くから、望遠鏡で戦場を眺める。

 凛音達が魔法で攻撃したのが見えた。

 攻撃された物見櫓は石造りのようであったが、木材を一切使わないわけではない。木の部分が一瞬で燃やされ、瓦解していった。


 凛音達はもう一撃と、移動して次の物見櫓を目指したが、途中で反転。

 視線を動かすと、ディズ・オークが迎撃に現れたようだ。どこか禍々しい印象を受ける、金属製の鎧を身につけている一団だ。


 金属製の鎧という事で機動力は無さそうと思ったが、すぐにその考えを改める。

 それは奴らが迎撃に(・・・)準備された(・・・・・)一団だからである。

 足の遅さを考慮しない、別の理由があって奴らは出てきたのだ。



 奴らは鎧を着ているものの、魔術師だったようだ。

 槍のようにも見える杖らしきものを凛音達の方に向けると、黒く巨大な蛇のようなものが現れ、凛音達を襲った。


 凛音も速射性の高い魔法でそれを迎え撃つが、黒い蛇は止まらない。

 終が前に出てその蛇に斬りかかるが――二人はそのまま蛇に飲み込まれた。それまで蛇のサイズは横幅50cmもなかったと思うのだが、大きく口を開いたというか二人を飲み込む瞬間に頭から巨大化し、二人を乗せていた大狼ごと食らいついたのだ。


 一瞬頭が真っ白になったが、凛音は内側から魔法で蛇の腹を吹き飛ばし、なんとか脱出。

 ただ、その反動で大狼二頭が死亡。終も重症を負い、戦えないようだった。凛音も、立てる、歩けるというだけで、かなりボロボロである。



 夏鈴たちはそんな2人を助ける為に動いていたが、凛音が何か言ったのか、直ぐさま撤収しようと逃げに入った。凛音はここで殺されることを受けいれたらしい。

 そして凛音からのハンドサイン。俺は戦えない終たちを即座に回収、カードに戻した。

 凛音はそのまま敵を2体倒したが、そこまで。接近してきた敵に胸を貫かれそうだったので、こちらも回収した。


 夏鈴たちは逃げに入ったものの、別の部隊が現れておりこちらも似たような状況になりそうだったので、敵が黒い蛇を出した時点で全員回収した。





 これは、ヤバい。

 あのよく分からない魔法、黒い蛇はこちらの想定を簡単に踏み越えていく危険なものだ。

 なんの対策も無しに戦えば、無駄に被害が増えるだけだ。


 どうせ最後はタイラントボアでなんとかなる。

 そんな甘い考えが通用しなくなっていた。

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