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9-26 幕外:梟雄③(第三者視点)

 国主となった村河の元には、大量の書類が届く。

 彼は必死に書類に目を通して捌いていくが、その山は一向に崩れる気配がなかった。


 根を詰めれば逆に効率が落ちる。

 村河は、目の前の書類を捌く手を止め、休憩することにした。



 休憩中に村河が考えているのは、自分たちがこの世界に連れて来られた意味だ。

 よく分からない能力を持たされ、その能力の強さに応じた記憶を奪われ、訳も分からずここにいる。

 これまで何人もの同類に会って話をしてみたが、手掛かりらしきものは掴めないままだ。



 村河はこれまで、何人もの同類に会っている。

 そうすると仲良くなれる者もいれば、敵対する相手も出てくる。


 そんな中で、「仲良くしたくないが気に入らない相手」として『金野 成樹』という、大垣に根を張った男の事を思い出した。

 創に殺された、「金属の声を聴く」ことができる男である。


 あの男は記憶をほぼ完全に引き継いでいた、選民思想の強い男だった。

 この「時代遅れな世界」なら「素晴らしい世界(現代日本)」の住人だった自分が周りよりも優れているのは当然で、誰もが自分に跪けばいいと考えるような愚者であった。

 鑑定能力がそう言っていたのだから、間違いはない。


 同類であっても、村河は同じ現代日本の出身だったと明かす気にはならなかった。

 岐阜の方にも同じような能力を持つ女がいたが、こちらは金野に自分の素性を明かしていた様子である。もしかしたら、二人はセットでこの世界に来たのかもしれない。そうであるなら、実に羨ましい話だと村河は嫉妬していた。 



 この金野は、結局は創の暴力に屈したわけだが、それは簡単にできる事ではなかったはずだ。

 金を持っている権力者だったのだから、護衛はいたはず。その護衛を創たちは打ち破り、目的を達している。


 そこから考えつくのは、同類の仲間が居ると言うよりも「戦力を作り上げる種類の能力を持っている」という事実。


 錬金術とは、卑金属から金を作るというものではなく、「物の価値を上げる術」であった。最終的には人が人以上に進化するために必要な『賢者の石』の獲得を目指していたはずだ。

 ならば、錬金術師と目される創が仲間の能力を押し上げる種類の力を持っていても不思議はない。





 ニノマエから物を買う事程度で縁は作れない。そもそも従業員任せなのでそれで顔を見られるというのは都合が良すぎる。ありえない。

 それならばいっそ、農作物の大量輸出ができるほど豊作が続く神戸町へ視察に出た方がまだ可能性がある。


 村河はそこまで考え、すぐに自分の考えを却下した。

 このクソ忙しい時に、そのような時間を確保できないからだ。


 何をするにしても時間が足りない。

 今は地盤となる尾張の国、名古屋を安定させることが優先される。

 呼びつける事は相手が応じないだろうから、出かけられる程度の余裕が必要だ。


 つまり、目の前の書類をどうにかしないといけない。



 現実逃避の時間は終わり、村河は再び目の前の書類に挑むのだった。

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