表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/729

9-22 忘れていた事

 意図的に考えないようにしていたわけではなく、ほぼ完全に忘れていた事があった。

 そのことを思い出したのは村を出た翌日、エルフのキャンプ地に近付いた時の事である。


「ああ。そう言えば昔、家の場所を探り当てられたんだったか」


 何が問題だったのか? なぜ気にしていたのか?

 堀井組という相手が俺の家の場所を知っているからだ。

 エルフ以外では唯一、俺の家に来る道筋を知っているのが居る。それを気にすべきだと思ったのだ。



 堀井組が三河の主導権を握った場合、国の一つが俺の居場所を把握したという事だ。

 それはつまり、他の国にも情報が伝播する可能性があるという事だ。

 駿河に信濃、そういった親三河の国々が俺との接触を持とうとした場合、三河経由で情報が流れ、人がやって来る恐れがあった。


 砦があるし、ある程度の人は残した。

 すぐにどうこうされるという事は無いと思いたいが、わりと危険な兆候かもしれない。



 あの時家に来た、テルという男の事を思い出す。

 無骨なヤクザ者だと思ったが、あの手合いは意外と頭が良く、表情を崩さないので内面が読みにくい。

 かなり厄介な種類の人間というイメージだった。


 ただ、メインで対応した終に対し腰が引けたところがあったので、こちらに手を出す危険性を理解している、と思いたい。

 まぁ、テル本人が俺たちと戦いたくないと思っていても、周囲の意向次第ではそれも無視され、攻めてくる危険性は……間に美濃の国があるから、あんまり無いのか?

 よくよく考えれば、他国の軍勢を……あ。


「越前に軍を派遣するって言えば、素通りは出来ないだろうけど、ワンチャンあったな」

「その場合、他国の軍との作戦行動中ですから、単独行動は許されないのでは? 彼らも余計な事をして戦力を減らす愚を避けたいでしょうし」

「馬鹿の考える事っていうのは、常識を飛び越えるんだよ。で、どんな社会を作ろうと、上の方にとんでもない“頭の良い馬鹿”が混じるのはいつもの事なんだ」


 現代日本での記憶の中には、良い大学を出た(東大卒の)政治家が頭の悪すぎる事を言って叩かれるという事があった。しかも2回。

 付け加えるなら、それの何が問題かを本人が理解しておらず、「勉強できる頭の良さと、知性や品性は別物」という証明をしてみせた。卒業した大学は人を測る物差しの一つにはなるが、その人の一面しか捉えていない。

 どれだけ入学や進学が難しい大学を出る出来の良い頭があろうが、馬鹿は馬鹿なのだ。そしてそんな奴でも政治家になる事が出来るというのは、歴史が証明している。



「周囲の良識に期待するしかないのですね」

「そういう事だよ、夏鈴」


 国の上がまともでない可能性は大いにある。

 尾張の国の前国主などがその良い例になるだろう。

 それに抗って国を興した三河の国主がまともかどうかは、俺には分からない。


 ただ、まともであって欲しいと願うばかりだ。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ