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9-15 疫病対策④

 最終的にできたカードは『ヒューマン・アサシンヘッド』という、捻りも何もないカードだった。

 アサシンヘッドではあるものの、アサシンから進化してもヘッドに成れないこの悲しさ。


 麻薬中毒患者と麻薬の売人の間には、埋め難い溝があるようです。



『ヒューマン・アサシンヘッド』:ヒューマン:☆☆☆:小:10日

 ヒューマン・アサシンヘッドを1体召喚する。暗殺者集団をまとめる頭は、その特性上、薬物の投与に長ける。生かすも殺すもさじ加減一つ。彼の者の手は、人の命を(もてあそ)ぶ。



 フレーバーテキストから見ても、かなり最悪なユニットカードが出来上がってしまったわけだが、有用性という視点では、かなり優秀であると認めざるを得ない。


 こいつには病人がそこそこいる大垣市で、俺の薬を渡し医者の真似事をやらせてみたが、瞬く間に人気の医者となった。

 いつの間にか自分で薬を調合し、ディズ・オークの病気に独自の対応をしてみせたのだ。

 10日程度で大垣市の医者たちを従え一大勢力を築き上げるに至った。


 嫌になるぐらい、優秀な男である。


 とりあえずで与えた名前は「ジン」。

 医者なので「(ジン)」であり、暗殺者なので「(ジン)」である。

 できればただの「(ジン)」であってほしいが、中身は立派なモンスターだと思う。



「ははは。褒めても何も出ませんよ。御主人様」


 このアサシンヘッド、外見は人当たりの良さそうな優男である。

 柔和な笑みをたたえ、丁寧な物腰は執事服が似合いそうな雰囲気を醸し出している。


 しかし中身は人の命を玩具にする最悪な奴であり、究極的には自分の命すらどうでもいいと考えるようなサイコパスだと思う。

 俺も大概だと思うが、俺以上に人を殺す事への忌避感を持っておらず、命の重さは紙切れよりも軽い。


 毒と薬を扱えるだけでなく、普通に戦ってもそこそこ強い。

 有用である事は分かるが、あまり頼りたくない種類の人間であった。



「ところでご主人様。病人を治すのは構わないのですが、どうしても許可はいただけませんので?」

「当たり前だ。俺は人身売買に手を出す気は無い」

「嫌ですねぇ。ただの雇用計画ではありませんか。薬を無料で処方される事に怯える人はいるでしょうが、金のやり取りをしたうえでの薬であれば安心して飲むことができるというもの。

 そして貧富の差を問わず人を救うのであれば、私どもに、ほんの少し協力(・・)していただくように話をするのが近道です。

 もちろん、ご主人様の意に背くような真似はしませんよ。薬で人を縛るような真似はしませんとも。

 どうかこの哀れな従僕に、僅かばかりの信頼を頂けないでしょうか?」


 なお、ジンの言動は基本的に信用できない毒の要素が多量に含まれている。

 言われた事には忠実だが、言われていない部分はかなり自由気ままに振る舞うのだ。


 先ほどの発言の意図は「情で縛って逆らえない手駒を作りるので許可をくれ」である。

 また、そういった手駒を管理する人材になれば、病気がどうにかなってもカードに戻らず常駐できるという狙いもあるだろう。

 召喚主だからかね、何となく、言いたい事が分かるんだよ。


「これはこれは、手強いですね。

 ですが、いいでしょう。私は私の有用性を証明するだけですから」



 こいつの作る薬は、病気を治療するというより、病気によって発生する症状を抑えるものなのだという。

 そして誰にでも作れる薬なので、俺の薬と違って生産性が高い。


「投与の仕方を間違えると殺してしまいますけどね! あはははははは!」


 ジンは疫病相手なら有能だけど、怖い奴。

 アサシンヘッドに頼りがいを感じる事は、たぶん無いと思いたい。


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