9-14 疫病対策③
ドルイドは、薬草を合成したら出てくるヒーラーから進化した職業。
まぁ、薬草学に長けたジョブの一つという意味では間違っていないと思う。他にも医者とか、いろいろと選択肢はあったと思うし。
魔法使い系統のジョブが杖だったり、基本的にイメージに沿ったものを合成すれば何とかなる。
基本システムは一般的イメージを参照しているのだ。
じゃあ、暗殺者は何を合成して進化させればいいのかというと、『麻薬』だったりする。
一度、神戸町で暗殺者の話を聞いた事があったのだが、暗殺者というのは麻薬中毒者で、麻薬欲しさに人殺しに手を染める奴なのだとか。
人を殺す事への忌避感を薬物で濁らせ、殺しを厭わない駒に仕立て上げるのだろう。
俺が重傷者に麻酔を使った時に、そんな話をされたんだよ。
薬物中毒の怖さとか、そんな事をレクチャーするつもりだったんだろうね。
麻薬そのものは作る気も使う気も無かったので、その時はあんまり気にしていなかった。
自分の中で薬物中毒者って悪いイメージしかないから。麻薬を作る事は難しくないけど、作りたいという気持ちが一片たりとも湧いてこない。
なので、痛み止めの麻酔は作るけど、麻薬には手を出さなかった。
ただ、なんでだろうね? 暗殺者を用意しなければという使命感が自分の中にある。
これは直感か何かで、何かの理由で必要になるのだと、そんな気がするのだ。
幸い、手に入れたヒューマンスレイブのカードへ麻薬を合成することに罪悪感は感じない。
なので、サクッとやってみた。
『ヒューマン・アサシン』:ヒューマン:☆☆☆:極小:10日
ヒューマン・アサシンを1体召喚する。薬物によって正常な思考能力を奪われているが、体に染みついた戦闘能力は健在である。痛みを感じる事も無い、殺戮人形となっている。
ふむ。
俺は何でこんなカードを作ったんだろう。
作った後、何かが違うとツッコミを入れたくなった。
作るべきはこれではないと、何となく、そんな気がした。
暗殺者を作らねばならない。
麻薬を合成する必要がある。
進化させよう。
ベースはヒューマン・スレイブ。
さて。どの手順で失敗した?
俺はどうして、何をしたい?
考えてみたが、俺が欲しいのは「病気をどうにかできるカード」だ。
署長との会話で、俺以外に薬を扱える……ああ。暗殺者じゃなくて、「暗殺者の元締め」が欲しいわけか。
俺は薬物を作り、投与するユニットが欲しかったわけだな。
薬物を使われた側ではない。使う側だ。
だったら医者とか、それこそヒーラーの範疇でいい気もするんだが。
なんで暗殺者の元締めなんだろう?
まぁ、いい。
だったら麻薬のついでにワクチンでも持たせて、それで疫病対策になりそうなジョブを持ったユニットを作ろう。
たぶん、それが正解だ。