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9-12 疫病対策①

 食料関係の混乱は、しばらくすれば落ち着くというのが多くの人の予測である。

 と言うのも、もともと越前の国は食料自給率が非常に低く、かなりの量を周辺国家からの支援で賄っていたからだ。


 現状の混乱は支援した食料を持ち出せなかった事による混乱でしかなく、食料が生産できなくなったことで食えなくなった、という訳ではない。

 エルフのような一部の人たちを除けば、食料とは戦いの対価に支給されるものなのである。



 では、現状の混乱は何がメインかと言うと。


「あの薬の効果は、間違いなく効くという事が確認されているのですが……本当に量産はできないのですね?」

「ええ。材料が手に入るのは、また来年なので。隠し持っておくつもりだった備蓄分も、エルフに進呈しましたから、本当にすっからかんです」


 主に疫病関連である。

 俺の窓口になっている大垣市の警察署の署長さんは、初回のみで渡したディズ・オークの疫病対策役が必要だと言って、追加生産を依頼してきた。


 ただまぁ。

 こちらとしてもそれだけに魔力を使い続けるというのは嬉しくない話なので、きっちり、きっぱりと断っているわけだ。

 対価となるお金も、こちらにしてみればそこまで欲しい物ではないのだから、没交渉になるのも仕方が無いんだよ。


 自給自足が成立している相手には、利害を調整する通常の交渉そのものが無意味と言う。

 署長さんには悪夢だよね。



「奴らのばら撒いた疫病が蔓延しているのです。本当に、あの薬は作れないのですか?」

「いや、こちらとしては自分たちでどうにかするという発想を持ってほしい所ですけどね? 材料はあるのだし、血清ぐらいは作れそうな気もするのですが」


 この世界に、現代日本のような薬事法は無い。

 なので、クソ長い時間をかけて行われる安全性の確認などをすっ飛ばした薬品運用が可能であり、俺が持ち込んだ薬もそういった、ハイリスクな品として認識されているはずである。


 効能がどこまであるかは知らないけど、俺の薬を投与した人の血を使えば血清が作れるはずであり、それで満足してくれないかな、という考えもあった。

 しかし、それが現実的ではないと、署長さんは言う。


「血清は、かなりの量が必要なんですよ。それを一人の人間から採れる血液で助けようにも、月に1人が限界ですよ。

 それに、あの薬を投与した人と血液型が違えば問題ですが、それを調べる手段がありません。自分の血液型を知らない人も大勢いるんです」


 そうなのだ。

 血清は、作れない事は無い。

 しかし作ったところで量が足りないという問題が発生するし、血清を投与された人の血をさらに投与するという循環を作るのにも時間がかかる。

 即効性のある解決策ではなかった。


 しかも、この世界は人々の血液型を調べていない。

 そういった概念はあるのだが、一部の金持ち以外は血液型を調べることができないでいる。

 ここは現代日本ではない。



「軽めの症状の人が治ったら、その血を使って、というのも難しいわけですか」

「その通りです」


 これ、ちょっとではなく、かなりヤバい展開だな。

 ディズ・オークが病気によって自身を守る進化を遂げた種族という事もあり、その病気の危険度はわりと高い。

 このままでは、戦う前に病気でやられる可能性があるわけか。


 難民が発生しているのも、このあいだの先遣隊も、これを狙っていた可能性があるなぁ。


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