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9-9 エルフ難民④

「他の街の方々ですか? 私達は把握していませんね。

 襲ってきたのはご存じの通り、ディズ・オークでしたから。お互いに感染者を増やさないため、敢えてバラバラに行動していたのです。

 美濃の国や近江の国に伝手のある方はそちらを頼ったのではありませんか?」



 才ノ谷のキャンプ地にいるのはエルフだけだ。

 その数、おおよそ300人。

 これが多いのか少ないのかは、俺にはよく分からない。


 持ち込んだ食料で1ヶ月分ぐらい持つので、一息つくことは出来ると思う。

 1日に300人×3食で900食。持ち込みが2万食分と考えると約22日分だけど、彼らも食事回数の制限や周囲の動物を狩ったりするので、それぐらい持つようになる計算だ。



 これで1000人とかだとね、食料が心許ないのもそうだけど、その後の展望が悪い方に傾くんだよ。

 集落とかの維持可能な数って、農業の有無でかなり変わるから。今から農業をするのは難しいを通り越して不可能だろうからね。このあたりは木々の密集した森の中だし。


 あと、他の街とかの様子を確認してみたけど、着の身着のままで逃げてきただけあって、彼らの持っている情報は少ない。

 早い段階で撤退を決めたので人的被害は里の1割に満たない程度で済んだようだけど、その分だけ他が疎かになったようだ。

 命あっての物種とも言うし、間違った判断ではないと思うけど。



 他の難民が山賊に堕ちる可能性については。


「あり得ると言えばあり得ますね。生きることを優先すれば、仕方がないでしょう。

 無論、我々もむざむざと略奪されるつもりはありませんが」


 その辺りもちゃんと考えているから、襲われて酷い目に、ということは無さそうだ。


「いえ。またディズ・オークが襲ってきた場合は、また全力で逃げるしかありませんので……」


 考えていても、全ての事態に対応しきれるかどうかは別のようである。

 難民ならともかく、オークの軍だと厳しいよね。


 いざという時の駆け込み寺としてうちの村を頼っていいとは言っておいたよ。

 本当に、いざっていう時ぐらいにして欲しいとも言ったけど。





 キャンプに着いたのが夕方ぐらいで、そこから夕飯の用意を皆でしている。


 まだ逃げてから日が浅いので、ガリガリになっている人はいない。

 逃げ出したときは最低限の食料を持っていたそうなので、それと周囲からの採取でなんとか食いつないだようだ。

 それでも食事事情がヤバかったのは確かなので、食事を1日1回に減らし、ギリギリまで我慢に我慢を重ねていたという。


 子供など、一部にはちゃんとした量を渡していたと言うが……俺たちが来たときには歓声が上がったことを考えると、精神的に追い詰められていたのは確かだろうね。



 持ってきた食料は米などの穀類中心で、野菜や肉を少々。


 しばらくは普通に食事をしても大丈夫だと分かった人達の視線がまぶしい。

 無限に続くとは言い切れないけど、それでも食べ物のアテが出来たのは嬉しいようだ。中には俺たちを仏様のように拝んでいる人もいる。

 これを当然と思われたらムカつくけど、こうやって感謝されると気恥ずかしいというか、こそばゆいね。


 まぁ、細かいことは横に置き。


「いただきます」


 だね。

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