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9-8 エルフ難民③

 エルフ達は水回りの良さを理由に、徳山湖のあたりにキャンプを張っているらしい。


 徳山湖の位置は、一番近いところだと砦から6km先で、越前に向かう街道を少し西に逸れたところにある。

 ただ、キャンプ地は砦から見ると完全に反対側で、更に6km以上進まないと行けないらしい。


 らしい、らしいと言ってばかりだが、現地の情報を俺はほぼ持っておらず、土地勘が無いのだから仕方がない。

 最初に「才ノ谷のあたりです」といわれても全く分からなかった俺は悪くないと思う。

 普通に生きているだけの人にしてみれば、踏み入らない土地の情報なんて記憶に残らないものなんだよ。地元の山や川だって、なんて言われているか意識していないし。





 片道は約12km。

 一応だが1日で行ける距離なので、俺を含む主要メンバーで運送を行うことにした。


 カード能力を見せるつもりが無いので、これまでに無い苦労を背負う羽目になるが、そこは良い経験だと思っておく。実際、俺がいないメンバーが長距離運搬を行うのなら同様の苦労をするわけだし、フォローが出来るうちに経験を積むのは悪くない話だ。


 1tの食料とそれ以外の物資を運搬するという事で、例えば10人で運ぶなら1人100kg以上を背負うことになる。荷車の類が入れる場所では無さそうなので、リュックサックで背負って運ぶ。

 しかし100kgはさすがにキツい、無茶だと思うので、せめて半分の50kg以下にしようと、運搬要員“は”25人を用意する。

 それに護衛、自分たちの食料などの運搬も加え、合計40人という規模になった。


 50kgを背負っての山間移動。昔なら間違いなく途中で死にかけるような難事である。これは相当厳しい。

 幸い、細いが道はあるようなので、ガチの山道ではないという話だけど……エルフの感覚で言っている可能性もある。油断は禁物だ。

 特に山はアップダウンが激しいので、距離という情報以上に体力を求められるからなぁ。



 何年もここで戦ってきたし、ステータスなどは無いものの、レベル的な何かが上がっていると思うほど強くなっている。

 ただ、それでも荷物とかを運ぶのは大変なのだ。

 地形に天気に道路事情。はたまた山賊だって世の中にはいる。

 ニノマエのような行商人があまりいないのは、その為である。


 ふと思ったが、エルフの難民キャンプが山賊に襲われるとか……そんな事はないよな?

 いや、同じく難民同士でぶつかり合うパターンも考えられるので、山賊初心者の難民に襲われる可能性は否定しきれない。

 うわぁ。現状って、かなり恐ろしい事になっているかもしれない。





 準備を整え、翌朝、砦から出発した。

 案内役の白石さんらが疲労困憊だったので、きちんと食事と休憩を取ってからの出発である。



 主要街道から外れて脇道に入る。

 藪を掻き分けるといったことはしないが、獣道よりもマシ、という程度の道を歩く。

 このあたりは古くから道があり、湖も昔はダムが設置されていたなど、今でも人通りが無いわけではないと言う。荷車を持たない小規模な行商人の一部はこちらの道を使うのだとか。


「根尾から温見峠を抜けていく道の方が広いのですが、こちらも現役ですよ」


 湖近くの道は木々だけでなく、うねうねとした山肌に視界が遮られるので、かなり厄介だ。

 道中では湖に架けられた橋を通ったりもするが、足下が抜けやしないかと不安にもなる。湖岸沿いに6km、都合6回橋を渡ったが、かなり怖かったよ。これなら普通に戦う方がずっとマシである。



 そうして苦労しつつ、抜けた先にエルフのキャンプ地はあった。

 無論、誰かに襲われているとかそういったネタは仕込まれていない。俺はフラグなど立てていなかったのである。

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