9-3 投石機
カード関連だけが防衛力強化じゃない。
夏鈴を中心に、現在、投石機を製作中である。
「おー。って、あんまり飛距離は無いのな」
「おおよそ300mが限界です。創様」
投石機の構造というのは、非常に簡単だ。
ぶっちゃけてしまえば、馬鹿デカいシーソーである。左が下がれば右が上がる。それだけなのだ。
軸受けになる土台、ギッコンバッタンするアーム、アーム両端の皿。それだけあればいい。これぐらいの構造など、いちいち工学知識とか持ちだす必要など無いのだ。小学生だって絵に描けるだろ。
そんな訳で、切り出した木材で投石機を5台作らせてみた。
材料になる木材は大量にストックがあるので、組み上げはたった2日で終わっている。
「これを使ってディズ・オークの部隊を投げ込めば、細菌兵器になりますね」
「夏鈴……さすがにそんな事はしないぞ」
「そうですね。即効性がありませんから、私たちでは有効活用しきれません」
「いや、そういう意味じゃなくてだな」
「分かっていますよ。冗談です」
これを使って岩でも飛ばせばそこそこの攻撃力になるだろうが、この世界でどこまで通用するかは分からない。
単発の攻撃力で言えば、魔法未満、タイラントボア未満、バリスタ含む通常攻撃以上という微妙な性能でしかない。命中率の低さを含めると、残念な兵器でしかない。
そのせいか、夏鈴は単純に武器として使う以外の方法で頭を悩ませている。ブラックなジョークが飛び出すのも、そういう事だろうね。
「創様。これは『強化』できますか?」
「んー。可能だね。☆は3つだ。そこまでコストがきつくない。やっぱり射程?」
「はい。500mは飛ばないと、使い勝手が悪すぎるのです」
現状のままだと、同じ射程でもまだ小回りの利くバリスタの方が使い勝手が良い。
凛音の魔法よりも遠距離を攻撃できるようにならないと、攻城戦でも使えないかもしれない。近寄ったところを敵の魔法でドーンと壊されかねないのだ。
攻城兵器なので、機動力や防御力に期待などできないのである。
「ま、すぐに出番があるわけでもないからね。俺の強化の前に、チマチマ改造してもらうとしますか」
「そう、ですね。手抜きはいけません。強化に頼ってばかりで何も考えないなど許されません。
申し訳ありません、創様。今しばらく猶予をお与えください」
「そこまで硬く考えなくてもいいけどね。まぁ、やれることを、まずはやって見せて」
「はい!!」
通常の投石機であれば、運搬に関する部分も考えないといけない。
簡単に解体や組み立てができないと、現地まで運べないのだ。
しかし俺にはカード化の能力があり、その部分は考える必要が無い。
つまり、普通に投石機を作るよりもずっと難易度が低くなる。
そうやって普通よりも考える部分が少ないのだから、改良に向けるリソースを全部射程に割り振ってしまう事も無理ではない。
アームのバランスや、皿の形、その他の仕掛け。
思いつくことを全部試してからでもカード化による強化は遅くない。
「俺の方は投擲用の爆弾でも開発するかねー?」
夏鈴が投石機本体を頑張って良くするのであれば、俺は投げる弾の方をどうにかしてみたい。
人間弾とか、そんなグロ系の発想はしないけど、爆弾とか火炎瓶付き油壷とか、パッと思いつくだけでもラノベ知識がいくつもの候補を教えてくれる。
その中から、適当に使えそうなものをピックアップするとしよう。