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9-1 反省会

 病原菌持ちのモンスター、ディズ・オークの襲撃により、砦周辺は壊滅的な被害を受けた。

 正確に言えば、ディズ・オークの軍を撃退するためにタイラントボアが走り回ったことにより生じた被害であるが、おおよそ間違っていないのだから気にしてはいけない。


 現在は莉奈が木々を動かし、隠ぺい作業を行っている。

 そのため、回復薬の作成はいったんストップしている。

 こういう時こそ必要とされそうな気もするが、俺の優先順位としては間違いなく砦周辺の整地というか木々の再配置の方が重要である。


 一応、今月は納品できない旨を手紙にしたため、送ってある。

 ディズ・オークと接触したことを理由としているので、納得してもらうしかない。



 手紙を送ったのなら薬を送っても同じじゃないかと思われそうだが、怪我に塗り込む軟膏と手紙とでは、どちらがより感染しやすいかは言うまでもない。

 リスクを考えれば当然の判断である。





 そうやって荒れた土地をどうにかしている俺たちだが、今回の戦争では反省するべき点がいくつもあり、夏鈴に頼んで情報の取りまとめをしている。


 ああすれば良かった、こうすれば良かったというのは後になってからしか言えない話でしかないが、ちゃんと次に活かそうとするなら無視してはいけない事である。

 「結果が出た後なら好き勝手言える」などと捻くれた事を言うよりも、「じゃあ同じ状況になった時、どうしようか」と頭を悩ませるほうが万倍は実入りがある。


 この状況下なら、備前まで行くかもしれないわけだからね。

 安全確保のために、外敵を削っておくぐらいの仕事はした方が良いと思うんだ。



「一番は、タイラントボアの投入タイミングです。どうせ使用するなら敵の偵察を削るなどと言わず、最初に使っておけばもっと効率よく戦えました。

 出し惜しみが戦線を広げた一番の要因です」


 最初の問題点は、俺の優柔不断さの指摘であった。


「そうではありません、創様。私の方から進言すれば良かったのです。ええ、創様だけの責任ではありません」


 指摘された俺は落ち込んでしまうが、そんな俺を見て、夏鈴は慌てたようにフォローを入れる。

 うん、フォローは嬉しいけど、反省して二度と同じミスをしないようにした方が良いと思うんだ。


「……そうではありませんが。

 次の問題点は、リスクを警戒し過ぎて消極的過ぎたのではないか、という意見が多いです。もっと、味方の損耗を受け入れて戦うべきだったと」


 厳しい意見、パートツー。

 俺の心に大ダメージ。こうかはばつぐんだ。


 死んでもどうにかなるのがカードモンスターで、再召喚という安全が確保されているのなら、皆はもっと積極的に動くべきだと思っている様だ。

 「死んでほしくない」というのは俺の感情論なので、今度は夏鈴もフォローしない。してくれない。


「夏鈴もそう思っていたのか?」

「はい。リキャストタイムの都合上、何度も死に戻る事はできませんが、それでも死に戻りを有効活用すべきだったと思います」

「どうにもなぁ。俺はそこまで割り切れないよ」


 これは死んだら経験値が減ってしまうという実利的な話ではなく、仲間が死ぬところを見たくない俺の感情論だ。

 まったく関係ない誰かが目の前で死んでも眉を顰める程度の俺だが、身内が死んだら怒り狂う自信がある。

 「生き返るから大丈夫。死んでこい」とは言えないのだ。


 そこで一瞬、自分の中の何かが引っ掛かった気がしたけど、違和感はすぐに消えた。



「それで、次の問題ですが――」


 違和感を押し流すように、夏鈴が次の話を始め出した。


 火力不足やその他の問題はこれから解決するとして、まだまだ考えるべき事は多い。

 目まぐるしく動く日常に、俺は漂い続けるのだった。


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