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8-22 北からの侵入者⑨

 バリスタを撃つためだけに単騎駆けをする意味は、いくつもある。



 単純に、相手の射程外から攻撃する事で一方的にダメージを与えたい。

 単騎で攻め入る事で相手を挑発し、砦での戦いに持ち込みたい。

 バリスタの威力を見せつけて相手を委縮させたい。


 ここまではまともな理由だけど、ここからかなり酷い話。

 相手の最大射程の確認。バリスタ以上の一撃を持っていないか、ああやって確認しているのだ。

 攻撃されたことで反撃してくれれば、そこで相手の射撃がどの程度のものか分かるわけだ。弓とか、射程距離には個人差があるからね。中には魔法的な何かで攻撃できる奴がいるかもしれないし。


 あとは相手の対応能力を測る試金石にもなる。

 俺は2回で終わり、それ以上は無理だろうと考えたけど、それより早く相手が対応してしまえば、その時に行った奴が死ぬ。

 その対応方法から、相手の能力が量れるという訳だ。


 言わば生贄。

 俺は「死んでこい」と言ったようなものである。



 そんな俺の内心など気にもせず、ゴブニュートの男がバリスタを抱えて駆けていった。

 弓術部隊の一員である彼は、「出番が来た」と嬉しそうに戦地へ赴く。


「戦闘用の部隊員になったんですよ、俺たち。ここで出番が無けりゃ、ただの役立たずじゃねぇですか」


 戦士には戦士の矜持がある、という事だろう。

 俺には理解できないものだが、敬意だけは忘れないようにしよう。





 バリスタの射程は400m以上あるけど、だからと言って確実に400m先に届くかというと、そうでもない。

 特に撃つのが設置型のバリスタであるため、ちゃんと設置できなければ最大射程がぐっと下がる。命中率について考える必要は無いが、それでもリスクは非常に大きい。


 弓兵の彼は手早く巻き上げ済みのバリスタを設置するが、相手に大きな動きが無い。

 防御を固めて防げばいい、その程度の考えで様子見を選んだようだ。

 距離があるため、相手がどんなものを用意しているのか分からないというのもあるだろう。



 バリスタが発射される。

 撃ち込まれた槍のような矢が相手の防御を貫通し、まとめて数人を串刺しにした。

 いつもの毒を塗ってあるし、その数人はまず助からないだろう。


 敵の周囲が慌ただしくなり、騎兵が今更、弓兵を殺してやろうと動き出した。

 俺は弓兵に渡したバリスタをカードに戻し、弓兵はオーディンに騎乗して悠々と砦に戻っていく。

 遅すぎる追撃は空振りに終わり、相手は弓兵が撃った場所まで前に出たものの、そのまま悔しそうに戻っていった。



 その様子を見て、今更気が付いた事。


 ディズ・オークの病原菌にやられない馬とか、いるんだね。

 割とどうでもいいことかもしれないが、あんなのでも騎兵をしているという事は、奴らの持っているのは馬には発病しない病気か何かかね。

 人間は駄目だと分かり切っているので、そこまで重要な情報ではないが、一応覚えておこう。


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