1-5 ゴブリンの集落③/計画骨子
ゴブリンの数に対抗するには、森に出向いてゴブリンを殺し、カード化する必要がある。
集落を殲滅することはできないが、これは別に矛盾する話でも何でもない。
集落から出て狩りをしている連中を襲い、敵の主戦力を削ってやればいいだけなのだ。
それなら手持ちの戦力だけでどうにかできる可能性が高い。
細かいことを言うなら、敵戦力がどれぐらいか確認して、勝てそうなら挑むだけ。勝てないと思えば戦わずにやり過ごせばいい。
敵戦力を国民皆兵士というか、全員を戦闘要員と考えた場合、カード化のノルマは20枚ってところだと思う。
使い捨ての戦力と考えて死兵とするなら多少の戦力差は覆せるだろうし、強化を含めてしまえばもっと戦力差が埋まる。なにより、いざとなればいったん退いて再起すればいいんだ。
ゴブリンのリキャストタイムはたった一日。
カード化まで上手くいけば、俺は無補給で毎日死兵を20匹ぶつけるという悪夢のような戦術をとれるのだ。敵の数が100近かろうと、なんとでもなる。
戦力については、この予定で動く。
あと、決めておくのは決戦の時期だ。
俺はこれを秋の終わりごろにしようと思う。
期間としては、半年先だ。森の恵みが少なくなった時期を狙って動く。
これは推測になるんだけど、冬にはゴブリンの食糧事情が悪化すると思うんだよね。
で、食料を得るために足を延ばし、俺たちの家までたどり着きかねない。
そうなったら終わりだ。厄介なことになりかねない。たとえ雑魚だろうと、たびたび襲ってくる連中がいるのは嬉しくないのだ。
だからあのゴブリンたちに家を知られる前までにどうにかしたいと思っている。
半年かけて、戦力拡充を進めていく。
半年たっても戦力が整わないなら、また別の方法論でゴブリン殲滅をしようと思う。
別にゴブリンなんて経験値やカードの素って考え方も、あるにはある。
殲滅ではなく壊滅にとどめ、同じ場所には住みつかないだろうからどこか別の場所でゴブリンを繁殖させ、またそこを襲撃するという方法も考えられなくもない。
経験値の仕様的に、もしかしたらその方が美味しい可能性はちょっと考えた。
けど、俺はそれを否定する。
人を襲い、奪い、犯す生き物なんていて欲しくない。
俺の我儘でゴブリンは皆殺しにする。
正しいとか間違ってるとかじゃないとは違う。俺が、そうするべきだと決めて、そのようにするんだ。
決めたことは貫き通す。それだけなんだ。
ここで決められなかったのは、人間の集落についてと、捕まっていた人のこと。
もしも人間の集落、村、町があるとして、俺はその社会とどう関わっていくか。
捕まっていた人が生き残ったとして、俺は彼らをどう扱うべきか。
これだけは、いくら悩んでも結論が出なかった。