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8-10 北の脅威④

 回復薬の製造と納品は、はっきり言ってしまえば負担でしかない。


 将来的には資金源になるんだろうけど、今の俺はそこまでお金に固執していない。

 村の生活は村だけで完結しているので、何かを外で買うという事がほとんど無いのだ。

 多少の備えは必要だろうが、ニノマエで稼ぐお金だけでも物凄く儲かっているので、回復薬で稼ぐ必要は無い。


 稼いだ分だけ消費もしないと経済が死ぬというというのもある。

 今の世の中は貴金属ベースの貨幣経済。紙幣ではないから、下手に資本が俺の所に集まると他の買い物しようとする誰かの財布に貨幣が無い、なんてことになりかねないのだ。

 俺のように(きん)を生み出せる人間が金を生み出して貨幣の数を保つのは禁止されているようなので、国の自助努力に期待はできない。


 浪費すればいいんだろうけど、何をすればいいかも分からないし、ニノマエの経営規模を拡大するのはできれば遠慮したいからなぁ。

 こういう時、売り物が特殊だと苦労するんだ。



 だから薬草を俺たち以外が育て、回復薬にして売りだしたら、俺たちが回復薬を作らなくて済むという大きなメリットがある。

 彼らにしてみれば外貨獲得の手段が得られるのだから、悪い話ではないと思う。どちらも損をしない話だ。


 なのに、それを提案したら、ものすごく胡散臭そうな目でこちらを見てきた。


「何を企んでいますか? その提案に、あなた方にどんなメリットがあるか分からない。何を、企んでいますか?」

「回復薬を作るのが大変なので、負担を減らすための一手ですよ。回復薬を作らなくてはいけない状況が少しでも改善されれば、その分の余力を他に回せるので。

 今は俺たちがストックする分も納品に回している状態なんですよ。

 薬草も回復薬も秘匿したいものではなく、薬草を育てるのが難しいので外には漏らしていませんが、広まったところで構わないんです」


 疑いを晴らすために、嘘は言っていませんよとアピール。


 回復薬のストックは、通常よりもペースを落としているので「ストックする分も納品している」というのは嘘ではない。

 莉奈には他の仕事をして欲しいというのも嘘ではない。こちらは言葉そのままだ。

 何より、ちゃんと育てられる人に薬草が渡る分には、俺は困らない。今のところ莉奈にしか育てられない薬草だが、エルフが育てられそうなら、問題は無いのだ。



 他の誰かが渡した薬草を育てられなかった場合、俺たちが嘘を教えたとか難癖をつけられる、嫌な展開が予想される。

 そうして薬草を育てるために莉奈を派遣しろだとか、そんな要求をされるのだ。

 そんな面倒な話をされないためにも、今までは外に出していなかったのだ。


 なお、薬草の☆は4つ。

 強化で育て易くすることも考えたけど、手間をかけるメリットがデメリットを上回っているので、手を出していない。回復薬も同じ理由で増やしていない。

 カード化はしているので、それで十分という判断だ。





 あと、こういった提案をした理由はもう一つあって、むしろこれが本命の話である。


 俺たちの村の場所を、他の連中に教えないで欲しい。

 そういうお願いである。

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