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8-9 北の脅威③

 ゴブニュートは背が低く、やや目が大きめで耳が長い特徴を持つ人型の種族だ。

 性格は様々でこれといった特徴を持たず、カードモンスターから解放したものも含め、何らかの共通項や傾向が見られることはない。強いて言うなら、俺の指示に対し従順であるというのが共通する部分だ。大半がカードモンスターだからと言ってしまえばそれまでである。



 で、目の前にいるのは背が高く、耳が長く、意外とマッシブ(筋肉多め)な方々である。

 彼らは背が高いゴブニュート、ではなく、『エルフ』という種族であった。


 こちらに来てから初めて見るエルフである。



 ……感動も何も無いのはなんでだろう?

 エルフスキーじゃないのもそうだが、顔面偏差値が普通で、黒髪黒目の日本人顔だからだろうか?

 つまりちょっと背が高くて耳が長くなった日本人。


 私たちの愛したエルフの夢は死んだ。何故だ!? 現実だからさ。

 トールキ〇先生、エルフが、日本人です……。



 俺は顔に出さないように頑張ったが、溢れんばかりの悲しい気持ちだけは抑えきれなかったようだ。

 エルフと名乗ったお客さんたちは、どこか気まずそうにしていた。





 越前の国にはエルフの里があるらしい。

 隠れ里ではないが、基本的にエルフだけが住むような場所である。


 エルフの里は森の中でもなんでもなく、海辺で畑を耕し、襲い掛かってくるモンスターを殺しては糧とするような方々が住んでいる。

 そこだけ聞くと森の貴族というイメージからかけ離れているが、「(エルフ)が住む方が、森に迷惑」という考えから、森と距離を取っているのだという。

 彼らは森の友人として、住人ではなく隣人である事を選んだようだ。



 そんなエルフがなんでやって来たのかというと。


「我々よりもエルフらしい少女たちがいると聞き、真偽を確認するためにやって来ました。

 実際は、実像は全く違ったようですが」


 まさかの、ゴブニュートの見学だった。



 知らない薬草を使った薬が出回っているという話を聞き、彼らはそれがエルフの知識や能力によるものではないかと考えた。

 そして真偽を確かめるべく、ここまでやって来た。


 ただ、それが無駄足だったと、俺たちを前にして気が付いたようだ。


「植物のエキスパートがいると聞いていましたが、確かにその様ですね。我々も知らないような薬草を育てているようです。

 ですが、エルフらしいという言葉とは違う、人よりももっと異質な方々とは考えてもいませんでしたよ」


 彼らは言葉にトゲのある物言いをしているが、別に喧嘩を売りに来たわけではない。

 エルフ仲間であるなら協力し合おうという意志によりやって来たが、空振りに終わったので苛ついているわけでもない。


 彼らは、俺たちが能力を用いた品種改良をしているのが気に入らないようだ。

 ただ、言葉にトゲはあっても品種改良そのものは止めないなど、こちらを黙認するらしく、そういった趣旨の言葉は口にしない。

 モンスターとの戦いに俺たちの薬が有用で、それに使われる薬草栽培ができなくなった時のデメリットを考えればそれは口にできないと、理性を働かせている様子だ。


 つまり彼らは、高慢ちきなエルフ様ではなく、話し合いの出来そうなエルフさんである。



 俺は少し考え、彼らが無駄足にならないよう、一つの提案をする。


「ウチで作っている回復薬の薬草やレシピとか、持って帰るつもりはありませんか?」

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