8-4 そうだ、砦を作ろう③
物理的な破壊力を持たない魔法も使い方次第。地面を直接掘るよりも、爆発で吹き飛んだ土砂を運ぶ方が簡単だ。
卵を電子レンジでチンすると爆発するのと似たような理屈で空堀を大雑把に掘った後は、内側の作成に入る。
まずは、堀とワンセットの『柵』を作る。
空堀の内側に柵や壁があった方が侵入されにくくなるからね。大げさな物でなくとも構わないから、何か人が通れなくなる邪魔な物があればいい。
ここで、最初の整地でカード化した木々を使う。
できるだけ隙間がなくなるように木を植えていく。
できるだけ隙間を無くすといっても、どうしても生きた木を植えるのだから、木と木の間には2mは空間が出来てしまうのだけど。
密集すれば当然のように上で枝がぶつかるが、そんな事は気にしない。
枝は全部落とすし、上の方に行けば木の幹が細くなるので、どうせ適当な高さでカットする。
それよりも植えることで地面に根を張るので、強固に地面へ固定される。簡単に倒れない支柱として使えることの方が重要だ。
製材してちゃんとした基礎工事をした方がよっぽど頑丈になるかもしれないが、簡易拠点の柵として使うのであれば、この程度でも構わないだろう。
柵の縦棒は出来たから、後は人力で横の棒を付けさせれば完成だ。
また、この砦の用地は上から見ると20m四方の四角形になっているんだけど、その四隅に櫓を建て、高いところから監視できるようにする。
まぁ、太めの木を追加し、梯子を掛けて上れるようにするのと、上に板を置いて長時間安定して居られるようにするだけだが。
防風壁と屋根についてはまた後日、と言うことで。まずは撥水加工の毛皮で我慢してもらい、時間に余裕のある時にやれば良いだろう。
そうそう。これに合わせてゴブニュート部隊を一つ新設した。
既存のゴブニュート・パーティに装備を合成し、周辺警戒の部隊にするのだ。
『ゴブニュート長弓部隊』:モンスター:☆☆☆:中::1ヶ月
ゴブニュート長弓部隊を召喚する。この魔物はゴブリンであり、人間である。人と魔の、両方の特性を併せ持つ。
遠くまで見通す目を持ち、強力な弓から放たれる矢は必中の一撃となるだろう。
長距離攻撃と言えばこれだろう、そんな発想で用意した兵種だ。
射程はおおよそ100m。矢そのものは200m以上だって飛ぶのだけど、威力の関係で100mが有効射程だと考えている。
200mどころか150m先まで矢が飛んだところでね、最後の方はヘロヘロなんだよ。狙いが正確だろうと、気が付かれていれば躱されるし。200m先を狙うなど、暗殺の時ぐらいだろう。
まだ新設したばかりの部隊という事で、これから色々と強化していくことになる。
櫓の上から敵を察知する能力を優先し、先手を打って敵を殲滅する。強化の方向性はそんなイメージだ。
遠距離攻撃と言えば魔法でも良いんだけど、感知能力などでは弓兵の方が上だった。
そういう意味でも、魔術師より弓兵を選んだ判断は間違っていなかったと思う。
ただ、弓兵が魔法を使ってはいけないという制限はないので、いずれは長弓部隊が魔弓部隊になるだろうね。
そう考えると、感知能力の次に強化するのは魔力関連かな?
いずれにせよ、彼らにはこれから頼ることも増えてくるだろう。