7-21 横暴な法治⑥
自軍の被害はゼロ。
軽傷を負う者すらいない、完勝であった。
敵方の死者は17人。重傷者23人、一部を切って焼いてから埋めた、埋め直したのが32人。ナニを切ったのかは、言うまでも無い。
怪我をしたのは死体と一緒に牢の一つへと押し込んだ。
死体と一緒に放り込まれた事で泣きわめいていたけど、保護した皆を見ると一切同情できないし、全員殺してしまうかどうか迷うところであった。
最後に、捕まった人たち。
無事な人は、ゼロ。全員がかなり酷い暴行を受けていた。
保護した12人全員が自力で歩けないほどの暴行を受けていたのだ。
特に若い女性に対しては、想像通りの事をされていた。
捕まった、拷問、若い女性。
この言葉が並んだ時点である程度の覚悟をしていたとは言え、実際に見るとこみ上げてくるものがある。
男の物はちょん切ってから、女の物は直接、男女年齢分け隔て無く、全員焼いておいた。
皆殺しにしなかった自分の自制心を褒めてあげたい。
この施設で一番偉い男については、自宅に帰ってこの場には居なかった。
ここに居たのは現場責任者までであり、そのほとんどが警備関連の連中である。本当に潰すべき人間は、大垣の街に引き上げていたのだ。
名前は聞き出したし、そいつだけは何があろうと絶対に殺すと決めた。
なので、最後にキャンプファイヤーをしてから助けた皆を担いで連れて帰る事にした。
建物に火を付け、巨大な炎を背に俺達は撤収する。
牢にいる連中については、どうなろうが知った事では無い。
死んだら死んだで、それまでである。
壁は木材ではなくレンガだったし、運が良ければ死なないだろう。
本気でブチ切れて暴れ終わった後に追加で暴れた俺だが、保護した皆は守るべき対象である。
怪我は魔法で治し、体の無事だけはなんとかした。
ただ、心のケアは、どうにもならない。
被害に遭った事で心をやられ、立ち直れないでいる男性が3人。
被害に遭った事で憎む対象を求め、俺を憎む事でなんとか心を持たせている女性が2人。
あれだけの被害に遭ったにもかかわらず、翌朝にはけろっと立ち直った女性が1人。
残る6人は俺のカードで召喚した者達なので、そちらは省略する。
恨まれる可能性があったのは分かっていたけど、直接恨み言を言われるのは、正直、キツい。
それが顔馴染みで、親しくしていた人であればなおさらだ。
時間をかけて関係を修復したいとは思うけど、今すぐにはどうにもならない。
なんとなくだけど、分かる。
今の彼女らはそうしないと、心が持たないのだ。
泣き叫び壊れてしまいそうになる心をつなぎ止めるために、誰かが恨まれなきゃいけないんだ。
その対象が俺となった事は、悲しいけど受け入れるしか無い。
深夜に移動と襲撃を終わらせたので、日の出の頃には神戸町に戻る事が出来た。
被害者を家族のところに帰し、お礼を言われたが、心境としては複雑だ。感謝の言葉を素直に受け止めきれない。
今回の事件、被疑者だけでなく俺にも心を整理する時間が必要なようだ。
徹夜で行動しているので、かなり眠い。
軽く睡眠を取ってから、俺はオーディンの背に乗り大垣に向けて走り出した。
これだけの事をやらかした連中に制裁をするのなら、ド派手に声高らかに、相手の悪行を喧伝してやろう。
どれだけ目立とうが関係ない。
その後、家と村が攻められる事になろうが気にしない。
正面から、徹底的にぶっ潰す。
主犯は絶対に殺す。あんな邪悪は生かしておく理由が無いし、生きて償うなんて悍ましい事を認める気など無い。
ここまでの事をされたのだから、宣戦布告はすでに終わっているのだ。
これはもう、戦争である。