7-12 遠距離通信、準備
村に戻ってからしばらく、魔法的なアプローチで情報のやり取りができないかを真剣に考える。
ベースにするのは科学技術によるものだけど、これに『魔晶石』などのカードを組み合わせることで遠距離通信を再現するのだ。
そんな訳で、モールス信号の装置から順番に試してみよう。
まずは『銅線のコイル』を作らせる。
銅線を作ったら、表面を、エナメルじゃないけど絶縁塗料でコーティングして、くるくる巻くだけのお仕事です。地図記号で言う発電所マークのような枠のトゲに銅線を巻くんだよ。
概要だけ説明して鍛冶師たちに振った。
で、『磁石』を用意する。
棒磁石のようなN極とS極が縦に長く別れているものではなく、長い円柱を上から見てN極とS極が別れているような磁石だ。
これを、さっき作らせたコイルの真ん中に差し込む。発電所マークの丸い部分にくぐらせるんだよ。
あとは磁石を回転させるだけで電気が生まれる。
磁石に回転用のシャフトをくっ付け、軸受けやコイル用の枠を付ける。
これで『発電機』は完成だ。
試しに極細竹炭の両端に銅線の先端を当て、磁石をくるくる回してみる。
すると電気が流れ、竹炭が淡く光った。
これで第一段階が成功。
モールス信号は、これに『スイッチ回路』と『電磁石』による受け側を足せば完成だ。
誰かが発電機を回し続けないといけないけど、物としては簡単な装置だし、カード能力を使えばこれを作る事はそこまで難しくない。
紙媒体に記録する装置はまだだけど、これで第二段階が成功した。
銅線を延長し、俺の家と村を有線で繋いでみた。
「出力が足りんわけだな」
「これ、そうとう頑張って回さないと駄目ですね」
試験用に作ってみた『モールス信号装置』だけど、発電機は人力、サイズが小さいので出力がまるで足りないと問題だらけだった。モールス信号装置を動かすどころか、竹炭を光らせる事すらできなかった。
家と村の間には大体5㎞の距離があるのだが、有線で電気を流すのは難しい。
「まぁ、強化してしまえば済むと思うけど。
あとは発電の自動化だな」
第三段階で手間取ったが、問題解決の糸口は分かっている。
一歩一歩、どうにかしていくだけである。