7-7 神戸町に変装で①
化粧やら美容やらの準備をしていたら、寒さの厳しい季節もあと少しで終わる。
猪狩りの時期は過ぎたけど、最近はこまめにやっていないから、きっと大繁殖しているだろう。
俺は変装の用意ができたという事で、神戸町に向かうことにした。
美濃の国のあたりは12月の末から翌年2月にかけて雪が降る事が多く、一回ぐらいはとても深く積もる事が多い。なので、3月を過ぎたあたりだともう雪が降る事など滅多にない。
暖かくなってきたとはいえ朝と夜はまだ冷え込むから、移動するなら防寒着は手放せない。
俺の分は普通の猪の毛皮を使った外套だが、夏鈴たちの分はタイラントボアの毛皮の外套である。寒さ対策になると同時に、防御力も十分だ。
なお、俺の分の外套はカード化&強化済みなので、そこまで防御力に難があるわけではない。
むしろ、魔力を通していない状態であれば、俺が一番硬かったりする。
今回の持ち込みはヘチマの化粧水は季節の問題で製作済みの分を降ろすだけ、美肌鶏は2世代目を雄雌1セットの引き渡し。
あとは普通の猪を狩って、そいつらを持っていく予定だ。
猪狩りと関連付けられないように、前回、店のおっちゃんに口裏を合わせてもらい、猪狩りを依頼されたという設定を用意した。
依頼されたからね、お仕事をし終えたのでもう一度顔を出したという訳ですよ。
一応、辻褄はあっている。ごくごく自然な流れだ。
やる事はいつも通り。
猪をおびき寄せるドングリを使い、集まったところを倒すだけの簡単なお仕事です。
このドングリも莉奈が用意したものを使うようになったので、カード枠を使わなくても大丈夫になった。
このドングリは特に何か追加で強化したいという事も無いので、念のためにカード化はしてあるけど、もう出番は無いだろうね。
で、猪を数頭退治し終えたら、それを抱えてみんなの所に――行く前に。
「夏鈴、終。偵察よろしく」
「はい。任せてください」
「おう。待っていてくれ」
神戸町の近くで俺はいったん隠れて、夏鈴と終を偵察に出す。
俺の護衛は魔剣部隊が受け持ち、単独行動は避ける。
町の中に勧誘してくる奴らがいないとも限らないので、気を抜いてそのまま町に入るといった事はしない。
石橋をスレッジハンマーで叩いてから渡るような迂遠さだけど、捕まったら怖いからね。しょうがない。
俺と同じく髪を金に染めた夏鈴と、黒色そのままの終が神戸町へと向かっていった。
金髪になった夏鈴は、背が低いけどエルフっぽくなった。耳が尖っているし、いかにもそれっぽい。
呪われた島のコスプレでもさせたくなるね。ビルドが全く違うので似合わないかもしれないけど。今着ているのはタイラントボアの毛皮の外套で、どちらかと言えば蛮族スタイルだけど。
まぁ、外見はどうでもいい事だね。
終はともかく、夏鈴は以前と比べ物にならないほどの美肌になったので、皆がどんな反応をするか楽しみだ。
特等席で見物できないのは残念だけど、後からでも楽しめるだろう。
化粧品欲しさにみんなが殺到したら、それはそれで面白いかもね。
さすがにそんな、コミックのような展開は無いだろうけどね。