7-4 金髪ロン毛
『金粉』 + 『無臭樹脂』 → 『金の髪染め粉』
『金の髪染め粉』:アイテム:☆☆☆:極小:一時間
髪を金色に染める粉。正しく使えば、金粉をまき散らした様なものではなく、髪に馴染んで自然な金髪になるだろう。
一番簡単なのは、俺が俺だと分からない様になる事。
そんなわけで、敢えて目立つ金髪になる事にした。
この世界でも金髪の人間というのは、居ないわけではない。
日本に帰化した白人さんの子孫なのか、それとも流れ着いた誰かの子供か。ごくごく稀に見かける事がある。
金髪と黒髪だと、黒髪が優性遺伝子だからね。金髪同士で結婚とかは難しいだろうし、どうしても世代を経れば減るものなのさ。
そんなわけで、目立つ金髪になってみた。
ちゃんと眉毛とか下の毛も染めたので、抜かりはない。
体毛は濃い方じゃないからね。胸や腹は塗ってないけど。目立つ部分はちゃんとやったよ。
これなら俺が俺だとすぐに気が付く事はないだろうし、何か言われても「創は黒髪だから気が付かなかった」という言い訳が成り立つ。
ついでにウィッグで髪の長さも変えておく。
普段は短めにしているから、髪を長くするだけで印象はずいぶん違うはずだ。
あとはカラーコンタクトでも作れればいいんだろうけど、さすがにそんな物を作るアイテムは無い。
眼鏡を進化させたらコンタクトレンズになるかもしれないけど、今のところ優先順位の問題で、そこまで手を出す余裕がない。
あ、伊達眼鏡ぐらいなら作れるかも。
変装様のアイテムとしては定番だし、サングラスにすれば伊達眼鏡でも普段から使えるな。
こっちは本気で検討しておこう。
そんなわけで、変装の効果のほどを知るため、神戸町にやってきた。
あまり目立たない様にして、知り合いに接触するつもりだ。
町中を歩くと、さすがに人の視線が集まる。
当たり前だが、普段着ている服とは違うものを着ているから、簡単に俺と分かるはずなど無いはず。
「あれ、創ちゃんじゃない。髪の色が違うから、一瞬誰かと思ったわよ」
「お、ハジあいたっ! 何すんだよ、母ちゃん!」
……簡単じゃ無いかもしれないけど、仲のいい人達には分かるようだね。
俺が変装している理由を察して、小声で話しかけたり、大きい声で名前を呼ぼうとした子供を止めたり、気を遣われてしまった。
「分かります? 頑張って変装したんだけど」
「創ちゃんだしねぇ。お化粧もしてないし、それぐらいなら分かるわよぉ」
何が楽しいのか、ご婦人は変装した俺を楽しそうに笑いながらチェックしている。
「ねぇ、どうやって髪の毛を染めたの? これは付け毛ね。お店で売り物になるのかしら?」
俺の変装は女性陣や子供にはほとんど通用しなかった。
その後、食堂のおっちゃんや店の常連の皆の所に顔を出してみたけど、男連中だと気が付くかどうかは半々ぐらい。
全く効果が無いわけじゃなくて、ホッとしたよ。
ただ、女性陣からは髪染め粉を譲って欲しいと言う話が出たのと、どうせなら肌の色までちゃんとやりなさいというありがたいお言葉を貰った。
そして化粧のやり方を習ったけど、とても疲れた。
夏鈴にも一緒に化粧の勉強をして貰ったので、いざという時はそっちに頼ろう。鏡も無いから、難しいんだよ。
あと、使った化粧品は品質が微妙なので、自分で作った方が良さそうである。