7-3 勧誘者たち
まとめてあった情報を見ると、俺を確保しようとしている組織は4つのようだ。あと堀井組。
分りやすいのが美濃の国。
地元なので当然だろう。岐阜の方から使者が来たらしい。普通の勧誘で、話をしたいから一度顔を出して欲しいと言っていた様だ。
武力担当の部下が欲しいそうで、待遇は期待して欲しいと好条件を用意しているそうだ。ただ、一般市民の10倍の給金とか言われても、俺にはピンとこないけど。
嫌な気分になるのが大垣。
俺が脱獄と言うか脱走したことを理由に犯罪者として確保するという一団と、全く別の「犯罪者扱いしているのとは別組織ですから」と言っている一団の2つ。
内部の権力闘争があるみたいだね。関わりたくない。どちらについても碌でもない目に遭うだろう。
残る最後は、日本海沿岸にある越前の国。
こちらは最近、主力級の魔法使いがいなくなり、防衛ラインに不備が出ているという。戦力が足りていないと言うよりは体制の変更直後で慣れていないというだけの様だが。
とにかく戦力補充を常に考えているため、有望そうな人材が居るならスカウトしたいと言っていたらしい。
ここのスカウト担当はすでに帰ったという報告を受けている。
残る堀井組は、髪の毛の長さが中途半端なモヒカン3人組が現れたという話だけど、組織の人間かどうかはよく分からなかった様だ。
ここに居ればいずれ会えるだろうと、今は真面目にバイトをしているらしい。
地元関連3つと遠方の激戦区が1つ。
この中で選ぶとしたら、美濃の国一択というのが笑えない。選ぶ気は無いけど。
俺は戦闘狂ではないし、戦うのを仕事にするつもりがない。
平和に生きていられるならそれで良いし、仮想敵国の様な連中と連む気は無い。
そして美濃の国に仕えてゴブニュート村を国の保護下に置く、なんて考えもない。
未だになんのアクションもないけど、高富の連中とは半ば交戦状態の様なものだからね。そういった心理的な面で言えば、あり得ない。
俺の考えは「現状維持」がベストだと思っている。
適度に人と交流を持ち、自分の勢力を維持して生きていく。
いざという時、戦う時に備えて準備はするけど、それぐらいならどこでもしている事だからね。常識の範囲だろう。
戦力の無い国など、滅びて当然だと思う。
俺はどこかの誰かの道具として生きたいなどとは思っていない。
友人のために力を使う分には構わないが、命令されて戦い続けるとか、そんな戦奴のような扱いをされたくない。
何かを作る事は楽しいと思うけど、延々と1つの事を繰り返し、一切自由がない様な社畜にもなりたくない。
他のみんなと同じように仕事をするのは構わないんだ。
ただ、俺の能力が一般的なものでは無いから、それを知って利用しようとするかもしれない相手に対してどうしても身構えてしまう。
本当に、普通の生活を送らせてくれるのか、ってね。
たぶん、神戸町の皆となら、上手くやっていけると思う。
あそこでも能力を秘密にしているけど、町の皆が信用できないからではなくて、周囲にバレたくないから黙っているだけだ。
さすがに町の全員から好かれているとまで言うほど自信家ではないけど、わりと大勢から好かれ、頼られていると思うわけだ。
問題がゼロなんて言わないけど、長期間一緒に居ても大丈夫だとは楽観視している。
老後の事なんか全く想像も出来ないけど、年老いた俺は村に居るか、町に行くかで悩むかもね。そんな気がする。
地元からのお誘いに関しては、どこかに所属しない限りずっと付きまとう案件だ。
何かしらの対策が必要だろう。