6-23 素材の活用②
鍛冶師にする予定のゴブニュート。魔法鉄で何か作るのは彼に任せ、俺は別の所に移動する。
「できた?」
「上手にできましたー!」
別の所では裁縫師、ゴブニュート・テイラーの女性が毛皮で服を作っていた。
毛皮は針と糸で縫って使うため、毛皮の扱いは裁縫師の仕事の範囲である。
毛皮を鞣して硬い革にするとリベットなんかで加工するから鍛冶師の仕事になるんだけど、こびり付いた肉や皮脂を取り除いただけの毛皮として加工する場合、担当は裁縫師なんだよね。
硬いと鍛冶師。柔らかいうちは裁縫師。その程度に考えている。
で、裁縫師に頼んだのは、防寒着を兼ねた毛皮のコートだ。
上半身を覆う、フードなしのコート。
内側に布を当てているだけでなく、断熱効果を期待して羽毛を綿のように入れてもらった。
外からは見えないので分かりにくいが、モコモコのコートはさぞかし温かい事だろう。
「夏鈴様他、計六着分です!
あと、創様の分として、ただの猪の毛皮ですけど、もう一着用意しました!」
タイラントボアの毛皮で作ったコートが六人分。
試しに魔力を通してもらうと、弾性はそのままに強度だけが増していた。曲げる事はできるけど、刃は通さないといった特性を持つ。
確かにそうだよな。毛皮がそのまま鉄みたいに硬くなって伸び縮みしたり曲がらなければ、ボアでも走り回ることができなくなるか。
うん、これを着て、硬くしたままでも普通に戦えそうで何よりだ。
「糸の部分からやられてはいけませんから、切れ端の毛を糸にして縫いました! 褒めてください!!」
ちなみにこのゴブニュート・テイラーは、リリース済みであり、カードモンスターではない。
カード枠を圧迫しないようにと、リリースしたゴブニュートの一人である。
カードモンスター時代の扱いが影響しているからか、基本的に彼女らは俺に好意的だ。
そのあたりに例外は無く、俺を嫌っている元カードモンスターというのは、今のところ存在しない。
ただ、子供の方はそうもいかず、中には俺と相性の悪いゴブニュートもいる。
まだチビッ子なので、なにかと親の頭を下げさせる、俺のような奴が許せないらしい。更に言えば俺たちの仲が良いのは分かるため、親を盗られたという意識もあるっぽい。
しょうがないね。子供だもん。
この裁縫師は、子犬系で俺に頭を撫でられたりするのが好きみたいだ。
普段の仕事はともかく、こうやって特注の仕事を頼んだ後は褒めて欲しいとすり寄ってくる。尻尾があれば、ブンブン振っている事だろう。
……この子に狼を合成したら、獣人にならないかなぁ? 似合いそうなんだけど。
考えた事の無い組み合わせだったため、適当なゴブニュートLv10と、草原狼の組み合わせが可能かどうかチェックしてみる。
……。
…………。
できるし。
って、ああ、ライダー系のカードなのか。
獣人は無理っぽいね。ウルフライダーになるだけだから。
とりあえず、そういう選択肢もあるとだけ覚えておこう。