6-19 戦利品:牡丹鍋の材料
「そうきたか。いや、なかなかの謎仕様だよな」
『タイラントボア・マザー』:モンスター:☆☆☆☆☆☆:大:6ヶ月
タイラントボア・マザーを1頭召喚する。タイラントボアは、魔力を扱い、牙や毛皮を硬化する魔物である。嗅覚に優れ、動きは素早く、泳ぎも得意で、人間が逃げ切ることは不可能だ。大きな岩をも砕く突進は獲物を逃れ得ぬ死へと誘うだろう。
マザーは子を産み、育て、守る者である。産まれた子供たちは彼女の後ろを歩くだろう。
『タイラントボア・ベビー(未熟児)』:モンスター:☆☆:小:1日
タイラントボアのウリ坊を1頭召喚する。タイラントボアは、魔力を扱い、牙や毛皮を硬化する魔物である。ただ、幼いうちはその力を十全に発揮することができない。
しかも未熟児のため、生存そのものが危ぶまれる状態である。
マザー1枚、ベビー3枚を入手した。
色々とカード化の仕様についてツッコミを入れたいが、言ったところで結果は変わらない。
こちらにとって都合の悪い話ではないから、考えないようにしておこう。
なんでこうなるかな?
色々と手に入るのは良い事なんだけどさ。
最後の最後で喜ぶに喜べない、突っ込みたくなるオチが付いたが、それでもタイラントボア狩りは終わった。
俺は狩った証明用の「見せアイテム」として毛皮を選び、まずは解体してからカード化した。
毛皮もカード化したんだけどね。やっぱり魔力で硬化するっていう効果は強いと思うよ。
魔力担当の凛音が使ってみたけど、ガチガチで鋼のごとき硬さになったんだ。しかも毛皮だから表面の毛が硬くなると、おろし金みたいになって触れたものを削り取る。
人間とかが相手なら、体を擦り付けるだけで攻撃になるよ、これ。
骨の方も以下同文というか、似たようなものだ。
これをどう使うかで俺たちのアイディアを試される気がするけど、一瞬だけ、これで豚骨ラーメンを作ったらどうなるんだろうって考えてしまった。
一時的に皮膚を強化する能力を得たりして。そんな妄想をしてしまったよ。
あと、お肉。
今回は、何となくだけど、カード化した後の『強化』で毒抜きをして、食用可能にしてみた。
モツは毒として再利用した方がいい状態だったけど、足とかは毒が浸透していなかった肉も結構あるので、食べられそうな部分は食べて供養することにした。
「創様。こちらをどうぞ」
「肉になっちまえば食うしかないよな」
「うまー」
猪狩りがシーズンの今は、まだ寒い時期である。
だから体の芯まで温まる鍋料理が美味い。
葉野菜に青物、そしてボア肉。
肉には特殊効果が無く☆も一つなので、いい感じに熟成させて鍋に投入してみた。
ちょっと匂いに癖があるけど、弾力が強くプリプリした肉は、美味い。
山歩きで疲れた体に肉の滋味が広がり、癒される。
特殊な効果とかではなく、温かい鍋料理というだけで素晴らしいのだ。
出汁に使った味噌は自家製。
塩気のキツイ味噌ではあるが、これが甘みのある肉に合い、ちょうどいい。
脂が多めの部分を使ってみたが、とにかく美味い。ついつい箸が伸びる。
シメはウドンと雑炊の両方を作り、どちらも楽しむ。
追加で投入した卵でまろやかな味になり、もうお腹いっぱいなのだが、最後まで食べ切ってしまった。
「お野菜が足りませんでしたね」
「ああ、仕方がない。今日は枠と魔力を使い過ぎていたからね」
肉はたくさんあったが、カード化でストックしておいた野菜が少なかったのが残念。カードの枠もそろそろ危険領域だし、魔力の残量も厳しいので1枚分しか使えなかった。
この人数で鍋をつつく事など考えていなかったので、野菜だけがやや物足りなかったのは残念だ。
この日はそのまま野営をして、翌日、俺たちは神戸町へと帰還した。