6-18 2枚目の回収
格上相手に戦い抜いたタイラントボアの生き残り。
全力で足止めを行っていたため、動きは鈍い。
本来であれば、俺たちがこの場に居なければ、脳震盪で倒れた雄のボアを噛み殺し、2頭とも生き残って終了だった。
だが、この場には俺たちという、他の敵もいたわけだ。
こうなってはもう、生き残る道など無い。
先制攻撃で放たれた魔法が着弾。そこそこのダメージを与えた。
そして前衛を務める11人が殺到し、切られ、突かれ、そのまま死んでいく。
今回は十分な準備期間があったので、毒も使っている。どういう状況で介入するか分からなかったし、手は抜いていない。
さすがに3度目となると、タイラントボアとの戦いを特別な事とは思わない。
漁夫の利を得るようにしたことで、まるでただの作業でしかなかった。
俺はボアの召喚を解除し、倒れていたもう1頭の止めを指示。
こいつらを殺した証明に、牙の部分を持っていくことにした。
雄の牙が一本も無い事は何か言われることになりそうだが、倒したのは俺たちなので、文句を言われる筋合いはない。素材はしっかり回収させてもらう。
残りの部分も全て素材として回収するかどうか、もう1頭のタイラントボアをモンスター化するかについてだが。
「1頭を素材に、もう1頭をモンスターにしようと思う。
相談したいのは、どちらをモンスターにするかだね」
タイラントボアをもう1頭、モンスター化しておくのは決定事項だ。
そこは迷う理由が無い。
「増やす事を考えれば、妊婦の方でいいのですけれど……増やしたいのですか?」
「妊娠してない方でいいのでは? ご主人の枠をいくつも使うのは得策じゃない」
「増えたら困るよなぁ。飯とか、用意できなさそう」
仲間たちは妊娠していない方をモンスター化した方がマシと言い、もっと言うなら「モンスター化そのものを取りやめてもいいのでは?」といった雰囲気であった。
リキャストタイムが3ヶ月と長いので、俺の枠を圧迫しかねないからこれ以上は要らないという考えである。
スタックできるリーダー系カードも無いし、今はまだ様子見したいようだ。
それに働かせるだけ働かせて、飯を食わせないというのも酷い話だ。そうなると戦闘後の食費の問題が出てくる。
今回は気絶していたのでそのまま送還したが、働きに応じた報酬はしっかりしないと、使われる相手も面白くないだろう。
「成程。まぁ、それでも1頭はカード化するんだよね。戦わせることが目的でもないから」
「では、何をするつもりなんですか?」
「ただの合成素材」
細かい説明をする前にみんなが意見を言い出したのでそのままにしておいたが、欲しいのは色々試す、ただの合成素材だ。
増やすのも大変だから、そこはできるだけゆとりが欲しかったんだよね。
それなら、という事でみんなも納得し、妊娠している方が選ばれた。
妊娠している方の情報は無かったので、知られていないものをモンスター化した方が角が立たないだろうという事で。