6-18 ボア完殺②
ちょっと気恥ずかしい思いをしたものの、新しいカードを手に入れた。
☆の数は驚きの6で、今いる仲間よりも高い。戦った感触から言えば切り札級になるだろう。
ただ、雑食だけど大飯ぐらいとあるので、常時呼び出しておく種類の戦力にはならない。
それに町が被害を出しているので、召喚できることを知られると問題が起るかもしれない。
切り札と脅し用の見せ札は違うからね。この子はスポット的な使い方をするだけに留めよう。
「≪召喚≫タイラントボア」
召喚してみたタイラントボアだけど、なんか、サイズが一回り大きくなっていた。
あの個体はまだ若かったのか、体が小さい個性だったのか。村に来たのも同じサイズだったと考えると、こいつらは兄弟か何かで、まだ若かったんだろうな。
神戸町に来た奴の大きさは似たようなものと聞いているし、3兄弟だったわけだ。
推測になるが、親は越前で殺され、子供だけで逃げてきたって状況かも。
子供だけでも生き残ったのは親の愛かもね。
俺は召喚したタイラントボアに索敵を任せる。他の同種と戦うから、探してこいと。
するとタイラントボアは「倒してしまっても構わんだろう?」といった目で俺を見る。特に問題なかったので俺は許可を出すと、そのまま走り去るボアを見送った。
サイズ差もあるし、問題ないだろう。大きいのは強いという事だ。
ただ、その後の処理もあるため、任せっきりというわけにもいかない。
俺たちは走り去ったボアの後を追うことにした。
ボアが走り去った方角に歩くこと、30分。距離にしたら約2km先の山の中。
奴の鼻の性能はどんだけだと突っ込みたくなるほど性能がいいのか、それとも生前の記憶が教えてくれたのか。
すでに3頭は戦っていた。
元は太い木々が生えていたであろう場所は倒木ばかりになり、拓けた地形になっていた。あとは切り株でも処分すれば、何かに使えるだろう。
しかしそんな事はどうでもいい。そこで行われていたのは、(猪だけに)人外による強烈なぶつかり合いであった。
「2頭じゃなくて、3頭いたんだね。ヤバかったなぁ」
「はい。事前情報との食い違いは怖いですね。確認を怠ったのは失策でした」
1対2とは言え、サイズで言えばこちらが有利。相手は両方雌なので、牙も短い。普通に考えれば、負けないだろうね。
情報に無い1頭の、お腹が膨らんでいなかったら。
「妊娠中で、ここに残していたわけだ。最悪だな」
「はい。ああいった手合いが一番怖いですからね」
牙の分だけ攻撃力はこちらが有利。相手の毛皮に大きく裂傷があるのを見ると、間違いは無いと思うけど。
残念ながら、相手はとっても怖い“母親”だ。
腹の分だけ動きが鈍ろうと、それぐらいの不利はひっくり返しそうなんだよね。