6-14 ボア完殺①
槍の長さは3mだ。
しかし、つま先に固定し前に傾けているので、前に3mも突き出しているわけではない。専用の持ち手を使っているがせいぜい2m強といったところだろう。
いや、高さが無いとボアの鼻先に穂先を合わせられないし、下の方では地面に寝かせているのと何が違うとなるので、それでもまだマシなんだが。
5本の穂先のうち、2本がボアの体に突き刺さった。
そして4人が吹き飛ばされた。
2人分の槍が刺さったわけだが、残り2人の槍は角度の問題でボアの横っ面を撫でただけに終わり、ダメージを与えた様子は無い。ただ、彼らのおかげで残り2本がしっかりと刺さったのだと考えるべきだが。
2人は吹き飛ばされただけで、2人が牙に体を削られ大きく出血している。おそらく吹き飛ばされた全員が骨折をしているだろう。
槍とつま先の固定は、履いている靴からわりと簡単に外れるので、刺さった槍がそのままでも引きずられはしない。だが、それでも楽観視できないダメージを負い、早く治療に当たらなければ拙いと思う。
「死にさらせ! 『ファイアジャベリン』!!」
俺は顔面に槍が刺さったことで足を止めたボアの横っ面に魔法をぶち込む。
俺の魔法は魔力消費固定なので威力の上乗せが出来ず、ボアが体に纏う魔力で相殺された。
それでもその分の魔力を消費させた様子で、かなりのヘイトを稼いだようだ。ボアの鼻先が俺の方を向いた。魔法の炎で炙られ、眼球の片方が白く濁っている。
「こっちにもいるわよ! 『ファイアジャベリン』!」
今度は凛音が大声を上げる。
俺に続いて魔法を撃ち、ヘイトを分散。むしろ俺より高威力のためより強く注意を引きつける。
彼女の魔法も俺と同じ横っ面に当てたが、彼女の魔法はしっかりと毛皮を焦がしている。突き刺さった槍も新調が必要なぐらい損傷した。
「仲間の、仇ぃっ!」
そこへ、残る魔槍部隊の生き残りが突貫した。
彼の狙いは横っ面では無く、ケツの穴。走る勢いと体重を上乗せして、槍を50cmは埋め込んだ。そこから先は分厚い筋肉に阻まれるし、槍を括約筋で掴まれるので通らない。毛皮が無いからと言ってこればかりはなんともならない。
槍には毒を塗る時間が無かったので致命傷にはならないし、ヘイトを稼ぎきれない。
ボアが現在脅威に思っているのは凛音が一番で、次が俺。他は無視していいと思われているようだった。眼球一つを焼かれた奴の視線の動きから行くと、たぶんそんな感じ。
でも、こちらの仲間は他にもいるんだよね。
魔法職という事で後ろにいたから無事だった魔術部隊。彼らも攻撃を始めた。
同じく後ろにいた癒術部隊の元へ魔剣部隊が回収した怪我人が運ばれ、治療を開始する。
あとは最後方で後方警戒を担当した、うちの物理最強がボアに踊りかかる。
これで、詰み。
ボアの2頭目はそうして退治された。