6-10 素材の有効活用(予定)
もうリリースしたけど、素材としてカード化をしたことで、あの化け物猪の名称が分かった。
『タイラントボア』
タイラントは暴君とか、そんな感じの意味だったと思う。
横暴なリーダーと言うより、どっちかというと暴れまわるとんでもない奴って意味じゃないだろうか。そんな気がする。
こいつは魔法的な特殊能力により、毛皮と骨の強靭化ができる。
ただ、そうしていると当たり前のように魔力を消費するので、戦闘中以外はそんなに動き回らないんじゃないかと思う。
徹底的に攻め立て、魔力を使い切るように仕向ければ普通の武器でも追い払えそうである。相応の被害を覚悟する必要がありそうだけどね。
シンプルな能力なので、有効な対策はこちらもシンプルに力押し。
凛音の魔法のように、高威力の攻撃で攻めるしかない。相手の能力は魔力消費による防御能力の上昇であって、無敵になる訳じゃないんだから。上昇した防御力以上の火力があればなんとかなるのだ。
「でも、魔剣部隊の魔剣とか、終の剣とか。業物で、切れ味が劣るって事もなさそうな気がする」
「……すまん、ご主人。さすがに、動き回る鉄以上の相手を切るには腕が足りないようだ」
金属の強度で言えば、何気にこちらの装備の方が上である。
ただ、相手の毛皮より武器の方が硬い事と、相手に有効打を与えられるのとは話が違う。
動き回る敵を切ろうとすると、その運動エネルギーも防御力に加算されるため、普通に切るより腕前が必要とされるのだ。
終達は素人ではないが、まだその域に達していないという事。
更なる精進が求められた。
タイラントボアの毛皮でコートを作らせた。
相手の体が大きかったので、8人分を用意できそうだ。一番できの良い一着は夏鈴が確保し、カード化する予定である。
長く使っていれば、またいつか強化することもできるだろう。もうすぐ冬なので使う機会も多そうだ。
このコートは俺が着た方が良いと夏鈴は言うが、俺の魔力の用途はカードの作成・強化・進化・スペルの使用に限定されるので却下した。
魔力による防御力の強化などしていたら、カードに回す魔力が足りなくなってしまう。
魔力消費系のコートなど、俺が使うという選択肢は無かった。それを着て、ぜひ俺を守ってほしい。
骨については、金属に混ぜて魔法金属とか作れないかと期待している。
粉にしたものの☆は3個で済んだから、上質な鉄さえあればそのうち試してみようと思う。
今はちょっと余裕が無いので後回しだ。
余談になるが、毒を使ったので肉とか内臓は、肉を一部の残して焼却処分した。
毒そのものはカードで出したアイテムだからカードに戻せば消えて無くなるけど、それでも被害を受けた先にはしっかりと影響が残る。そのままでは食えたものではない。
なので、カードにした肉から毒を抜き、食べられるようになってから食べようかと思う。
無論、これも後回しの計画だが。
素材の解体は鮮度が命。
処理は優先して行うけど、一通り終わったら神戸町に行こう。情報を仕入れたい。
「森の応急処置も終わったし、行きますかね」
タイラントボアとの戦闘で荒れた森も、周囲の木の配置をカード化とリリースで変更し、応急処置をした。
ちょっとスカスカになったが、切り株だらけで何かあったと一目でわかる状況はどうにかしたかったのだ。むしろ放置などありえない。
残った切り株が道標になってしまうので、1㎞ほど頑張って誤魔化した。そこから先は知らない。キリが無いし。
当面の目標は、タイラントボアの目撃情報の確認と、世間話。
ああいったモンスターがこれまでに、他にもいたのか確認したい。ついでに対処法も知りたいし。
個人的には、いて欲しいに一票だな。