6-8 毒と魔法からの剣撃
『毒の樹脂+2』:アイテム:☆☆:極小:6時間
胃液、腸液と反応し対象を壊死させる毒を含んだ樹脂。樹脂に混ざっているため吸収効率は良くないが、効果が出るまでの時間が極めて短い。
使ったのは、昔、川島の宿で出された毒だ。
あの時回収した毒はこれまで使うタイミングが無かったけど、こいつ相手なら使うのも吝かではない。
スレイブを使ったあの時の実験では内臓系がやられたのか、どんな効果があったかは細かく検証していないけど、かなりの即効性が期待できそうだった。
樹脂と混ぜた事で武器に塗りやすくなった分、効果は薄めになったが、そこは仕方がない。そうしないと武器に塗れないからね。
あとは致死量がどれだけ、という話である。
ちなみに樹脂は接着剤や塗料の目的で、結構な量がストックされている。
何かに塗るというと、最初に思い出すぐらいにはよく使う。
ただ、そのまま毒と混ぜると毒の効果が著しく弱くなるので、即効・速効性を強化しないといけなかったけどね。
毒を渡し、しばらくすると、化け物猪の巨体がいきなり地面に投げ出され、暴れはじめた。
体の中にある毒をどうにかしたいのか、それとも別の理由か。地面に体をこすりつける、のたうち回るっていう状態だ。
派手に暴れているので、誰も近づけない。
「凛音、お願い」
「『ファイアジャベリン』!」
そこで夏鈴から凛音に攻撃要請が入った。
ヘイトの問題だけでなく、相手が足を使って素早く動き回っていたり仲間が近づいて攻撃しているときは危なくて使えなかった攻撃魔法だが、ひっくり返って仲間が離れた相手なら躊躇しない。
凛音はようやく出番が来たと、目をらんらんと輝かせ、『ファイアジャベリン』を使う。見ているだけというのは歯痒かったようで、その間に溜め込んだストレスまで込めたような力強い一撃だった。
撃った凛音は掛け値なしの全力だったのだろう。魔力が尽きたとばかりにその場にへたり込んだ。
ウィザードの凛音の、全力の一撃。
普通に考えれば、これで終わりなんだろうけど。
「マジか。まだ生きているし」
「体が大きい分、生命力も強いのでしょう」
化け物猪は生きていた。
腹に酷い火傷を負ったが、それでも死んでいない。
暴れるのを止めて起き上がり、逃走の様子を見せた。
しかし、そこで終が止めを刺しに動いた。
相手が瀕死だからこそ油断せず、一番反撃を受けにくい側面からの攻撃。
大上段から、剣を力強く振りぬいた。
すると無事な部分の毛皮ごと化け物猪の体を大きく切り裂き、奴はそのハラワタをぶちまけ、倒れた。
内臓にダメージを与えすぎたので、ありゃあ肉には期待できないな。
毒も使ったから、そもそも食える代物じゃないか。
毛皮ぐらいは素材として優秀だろうけど、どうするかね?
倒した化け物猪だけど、戦力にするか、素材にするか。
俺は誇らしげに天に剣を掲げた終を見ながら、そんな事を考えていた。