6-6 魔力持ち
一人を残し森の中に入った魔剣部隊。
「こっちだデカブツ!」
「かかってこい!」
口々に何かを叫び、注意を引こうとする。
また、いつの間にか拾っていた小石を投げるといった事もしている。
しかし、あの化け物猪は動じない。
それよりも村の方が先だと言わんばかりの態度で俺たちの方を見ている。
音や小石などよりも、何が脅威か分かる頭を持っているのだ。村にいる俺たちをどうにかするのが先だと理解している。
だから残った一人が森に行かず近寄って剣を振るった。
猪は知能の高い生き物だから、陽動に引っ掛からない可能性はあったからね。無視できない攻撃で村を後回しにしないといけない。
魔剣を持ったゴブニュートの一撃は化け物猪の足に、確かに当たった。
だが。
まるで金属同士がぶつかったような、甲高い音。
鉄よりも固い魔剣の一撃は、あの化け物猪に大したダメージを与える事も無く不発に終わった。
そういえば、そうか。デカいという事はそれだけ足が強靭じゃなきゃ体を支えられない――って、んなわけあるか!
「魔力持ち! 魔力で体を強化していやがる!」
ゴブニュートの攻撃は、腕力が足りないという問題も確かにあったが、それでも相応のダメージを与えられるはずだった。
一撃で足を切り落とすなんて期待はしていなかったが、それでも肉に食い込むぐらいのダメージは期待していた。
しかも金属音ってなんだよ! デカさの時点で分かっていたけど、こいつ、普通の生物じゃない!
おそらく、巨体を支えるのに魔力を使っている。
魔力があったからこそ、あの大きさまで成長できたんだ。
化け物猪は、攻撃が通じなかった事で驚く俺を見て、ニヤリと笑った気がした。
明らかに馬鹿にしているといったふうで、無駄な事をした俺をあざ笑い。
「ていっ」
「ピギィィッ!?」
こっそり後ろに回っていた終に、ケツの穴を打ち抜かれ、情けない悲鳴を上げた。
「やれやれ。もっと長い、槍のような武器が必要だな。剣では殺しきれないか」
刃渡り60㎝程度の剣を突き刺した終は、敵を一撃で殺せなかった事に残念そうな顔をした。
そして剣を引き抜くと、そのまま森の方に移動する。
さすがにこれは無視できなかったのだろう、その場で反転した化け物猪は、尻穴から血を垂れ流し、木々をなぎ倒しながら森へと突進していった。
開幕、序盤の攻防は相手の生命力や防御能力の高さを見せつけられはしたものの、何とか一矢報いたと言ったところ。
こちらの最高戦力の一人である終なら攻撃は通りそうだし、これなら何とかなるだろう。
足に攻撃を弾かれた魔剣部隊でも、尻穴や、難しいだろうけど目などになら攻撃が通りそうだ。
ただ、こいつ。死ぬまで戦うなんてことは無いだろうから、どうやって殺し切るかが重要だよな……。