6-4 ニューマン③
理由は軽く経緯はグダグダだけど、偶然の産物であるニューマンは凄い。
物理的な戦闘能力では他の追随を許さず、魔法については凛音にやや劣る程度。武器防具の召喚もそのままできる。
敵対すればこれほど怖い相手もそうは居ないだろう。
ただ、問題もある。
継戦能力が低いのだ。なったばかりの頃の全力戦闘は持って10分。軽く流す程度の戦闘でも、30分持てばいい方だった。
これはフリーマン時代よりも短い数字である。
最初は力加減が苦手になっただけかと思ったけど、しばらく経ってもスタミナはこのまま。
人類の可能性はどこに行ったのかと言いたい。
今は弱点を補うべく、普通に訓練して普通に成長してもらっているので、ちょっとは伸びたようだけどね。普通の世界の話だから、甘く見積もって1分とかそれぐらいだよ。
訓練だけに時間を費やしているわけでもない。半年頑張ったところで、普通の成人男性の成長なんてそれぐらいである。そこまで大きな変化など見られない。
ニューマンになった終の変化で懸念したのは、残り三人もニューマンになりたいと言い出す事だったが。
「いや、それは無い」
「だな。怖い」
「あ、死んだ時はお願いします」
全員、拒否。
そのままでいいらしい。
俺からすれば簡単なパワーアップ方法で楽して強くなれるという話だけど、する方はそれでも嫌らしい。
「チートと言うか、ずるいと言うか。そういう話じゃなくて、自分が別人になるみたいで嫌なんだよ。
俺はこの姿で、このままでいい。終だって、嫁さんの話が無かったら、ずっとそのままだったと思うけど」
「まぁな。調の事が無かったら、ずっとそのままだったろうな」
残った三人の一人、新は、自分に人間を止めてまで力を求める理由なんて無いと言う。
「ご主人には悪いと思うし、せっかく作った居場所を捨てるのは勿体ないと思うけど、ここが攻められてこのままじゃヤバいと思ったら、俺は全力で逃げるよ。
命がけで戦うっていうほど、頑張る理由が無いんだ」
「ああ、なるほど。死んでもいいからって言える何かなんて、普通は持ってないからな。自分の命が大事なのは俺も同じだし、そこは構わないよ」
そう釈明した新は、俺に向かって頭を下げた。
ただ、それを怒る気にはならない。
誰だって大事な物はあるし、自分の命を優先する権利があると思う。
もちろん、俺を裏切って後ろから襲ってくるようであれば相応の反撃はするけど、そうでもなければ文句を言う方が筋違いだ。
命と自由を天秤にかける場面でもないから、そこまでしてパワーアップしたいとも思わないだろうしね。
終の娘の奏については、カードモンスターにして「パパとママ、どっちと同じがいい?」と確認したうえで、新規作成したフリーマンと合成しニューマンになった。
これをしないと終がニューマンになった意味が無いからね。家族みんな、カードモンスター。
追加二人分の枠が圧迫されているのがきついけど、そこは我慢するとしよう。
終達に頑張ってもらう分の対価だからね。