6-3 ニューマン②
最初はそんな事をしたら終が死ぬだけだと思っていたが、実際に試そうとしてみると、そんな事は無かった。
こういった話が出て、初めて知った仕様がある。
合意さえあれば、相手を殺さなくてもカード化ができる。
この仕様については、これまで確認する機会が無かった。
俺がモンスターを殺してカード化しているのを教えた相手はフリーマンの4人のみで、彼らのうち誰かが言い出さなければ、この先も当分は知ることなど無かっただろう。
終の方は、召喚術士に支配されていた経験から、こういった事もできるのでは無いかと予想して言い出したようだ。
俺は終のお願いを聞き入れ、彼をカード化した。
ここまでは俺の知らない情報も混じっていたけど、そういうものかと納得しておこう。
ただ、このあと終がお願いしたもう一つ。
「俺もゴブニュートになれないか? ほら、ゴブリンを合成して」
「あー。たぶん、できると思う」
終が、人間を辞めてゴブニュートになりたいと言い出した方が問題だった。
念のため、『ヒューマン・スレイブ』にゴブリンを足してゴブニュートができることを確認した。
『バトル・フリーマン』の彼のカードは使いたくないカートの1枚なので、こちらでは確認していなかった。
ゴブリンを足せないので「あれ?」と思ったが、ゴブニュートなら足せるので、そのようにしてみた。本人の許可も得たよ。
その結果、どうなったかと言うと。
『バトルチーフ・フリーマン』 +『ゴブニュート』 = 『ニューマン』
『ニューマン』:ヒューマン:☆☆☆☆☆:中:1年
人類は新たなステージに踏み出した。ニューマンは人類種の持つ可能性の発露である。彼らは多くのヒューマンを束ね、旧人類へと挑むだろう。
なんでこうなった!
冷静に考えれば、足したカードが全く違うのだから、全く違うカードができあがるのが道理である。
何もおかしくは無い。
ただ、出来たカード、特にフレーバーテキスト部分については物言いをしたい。
旧人類って何だよ!
しかも戦争でもしろと言うのか!!
人類はヒューマンに含まれるけど、ヒューマンっていう言い方はもっと多くの者を含むことが改めて確認できたのはいいことだと思うけどね。ちょっと衝撃がデカすぎた。
ゴブニュートも、カード表記ではモンスターだけど、ヒューマンの特性を併せ持つらしいから。半分はヒューマンなんだろうね。
で、エルフやドワーフがいるって話も聞いたことがあるから、彼らもヒューマンなんだろうね。
うん。俺の生活に特に関わることでも無いから、知りたくも無かった。
「ご主人。なんか、その……すまん」
「いいよ。誰の責任って話でも無く、この世界はそういうものだって事だよ。気にしたら負けだし、知ったからって何かしなきゃいけないなんて事も無いから」
色々とツッコミどころのあるカードモンスターになった終は、パニックを起こした俺を見て頭を下げたが、別に彼が何かしたという話じゃ無い。
俺の能力故なのか、この世界の仕様がと言うべきなのかは知らないが、やってみたことの結果がこうだった、と言うだけだ。
俺は周囲の誰かを駆逐すべき旧人類だとは思わないし、これまで通り、ここで静かに生活できればそれで良いんだ。
何も問題は無い。
誰かが責任を負うべき話でも無い。
気にしたら負けだ。
色々あったが、俺は考えるのを止めた。
考えたところで、しょうがないし。