5-11 男一匹、一人旅④
テルは川島から川に沿ってしばらく動き、各務原、岐阜、長良を経由し大垣に入ったところで足を止めた。
「こっから先は情報がねぇか」
創の足取りを追う旅は、目撃証言が長良で止まったため進行方向からの推測で大垣まで行ったものの、そこから先はどう動いたが分からない。
大垣でわずかでも目撃情報があれば良かったのだが、誰にどう話を聞いても、小娘三人を連れた男の情報は手に入らなかった。
「大きい街の方が人に紛れる。だが、こうまで情報が無いのはおかしい。
そう何日分も食料を持っているとは思えない。買った形跡がない。抱えていたという話も無い。水は魔法で出したとしても、食料は出せない。
なら、どこに寄った?
大垣以外だと……近くにあるのは神戸町か」
テルは、一般的な常識で旅の道のりを想定する。
長良川を渡った後の創の行動が全く読めない。
西の方に行った事までは分かったが、普通ならば大垣に入るはずが、足取りが追えない。創は大垣に入っていないようだ。
ならばどう動くかをもう一度考え、南北のいずれかに向かったものと思われる。
ちょうど大垣の北には神戸町があり、南には養老町がある。
そのどちらかを目的地とするなら、ここまで北西に動いていた創の行動を考えれば、北の神戸町が妥当だと推測できる。
「そういやぁ、ニノマエの連中も神戸町から来たって言っていたか」
神戸町の名を頭に思い浮かべた時、テルは以前出会った行商人を思い出す。
彼らは神戸町に根を下ろす商人で、最初は穀物を扱っていたという。
他にも、うちの店は蕎麦が自慢、などと言っていた。
「ま、話のネタだ。ついでに食っていくとするか」
若い男をカシラにした、ケツの青い連中。
だが、悪い奴らじゃなかった。
テルは創を探すついでに、蕎麦を食いに神戸町へと向かう。
これからが楽しみな連中の事を思い出しつつ。
神戸町は、そこまで大きな町ではない。
飯を食う所などそう数が無く、農業を中心とした田舎の町という場所、のはずだった。
少なくともテルはそう聞いているし、大垣でも特に変わった場所だという話は無かった。
「おいおい、こいつぁ、どういうことだ?」
だが、これはいったいどういう事か。
乗合馬車があり、想定されていないほどの家畜がいる。
農業で細々と暮らす小さな町ではなく、大量の家畜を抱える畜産都市。
穀物を売るほど抱えているというのに、さらに家畜を養う大量の食糧を生産できる謎の町。
テルは、思わず話が違うと叫びかけた。