4-24 冬の終わり
ゴブリンの妊娠期間は、2ヶ月ぐらいらしい。人間の場合は10月10日とか言うけどね、それぐらい。
Q.じゃあ、ゴブニュートは?
A.3ヶ月。
春になる前、まだ2月の終わり頃で寒い時期。
終とゴブニュートの子供が生まれた。
パッと見ではゴブニュートの男の子である。
ハーフやミックスかどうかは知らないけど、無事に出産できた。
「これで俺も父親か……」
出産のとき、産婆さんもいない状態だったのでもっと大変かと思ったが、男衆の目の無い所で女性陣が頑張ったらしい。
出産後も母子ともに健康であった。
名前についてはまだ保留。
急いで付けなきゃいけないわけでもないし、ここで俺が名付け親になるのも何か違うと思ったからだ。
語彙が少ないという終の為に、俺はわざわざ命名用の名前辞典まで作らされた。
俺も思いつくまま適当に漢字を並べてみたり、男女合わせて200以上の名前を書き出したが……何になるかね。
「寿限無」みたいな、超長い名前にならない事を願う。
なお、産婆さんというか、出産の補助には癒術部隊が手を貸している。
どうやら魔法による出産補助は有効なようであった。
春が近づいた事で、情報収集部隊である商隊の出発の時期が近付いてきた。
準備はできるだけやったけど、万全かどうかは神のみぞ知る。
商隊のメンバーは全員お金の計算などはちゃんとできるようになっているので、大きな問題は無いと思いたい。
……全員がほぼ素人ばかりなので、失敗の可能性は高い。最悪は生きて戻って来いと厳命してある。
まぁ、回数をこなせばあとは現場で鍛えられるだろう。
神戸町で下積みでもさせた方が良かったかもしれないが、それはそれで難しいんだよな。
あちらも人手は足りているし、わざわざ手間をかけるのもなんだかなぁと思う訳です。
最初の方だけ、最初の商売ポイントである神戸町にいる間ぐらいは手助けするけど、そこから先は本当に自分たちで頑張ってほしい。
「はい、2万円ね」
「これが15000円だから、えっと……」
「おつりは5千円。銀貨でよろしく。
……頑張れ」
「……はぁい」
本当に、頑張ってほしい。
目指せ暗算マスター。
お金のやり取りでミスをするとかなり大変だから、精算後には客におつりを確認するように言えよ。
あとから間違っているって文句を言っても聞き入れるなよ。
強気だ。
客は神様とかそんな大嘘は教えず、一部の悪質な客はこちらを騙しに来ると警戒させつつ、下手に出ないように徹底的に指導した。
商売も戦いなので、負けてたまるかという気概で挑んで欲しい。
可能なら、俺を相手にしても卑屈にならないように。
無理?
じゃあ、他の連中に訓練相手をお願いするか……。