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4-23 新たな命

 正月が終わり、数日経ったある日の事である。

 俺の前に、フリーマンのリーダーである終と一人のゴブニュートが並んで立っている。


「ご主人。俺は彼女と結婚しようと思うんだ」

「……はい?」

「その、去年、雨が降った時に、な。そういう関係になって。それで……子供ができたらしい」

「はいぃぃっ!?」


 俺は、終から「できちゃった婚」をするという報告を受けていた。





 古来より、梅雨と、台風と、大雪の季節は子作りの季節と言われている。

 これは世界中どこでも同じで、要は家の中で出来る娯楽が子作りぐらいしかないって状況が生まれると、そういう事になるらしい。

 終達も、その例に漏れなかった訳だ。


 終たちフリーマンはゴブニュート村の日本語教師が一番の仕事だ。

 関係を持つ機会は少なくないが、どこの不祥事学校教師だよと小一時間ほど問い詰めたくなった。

 まぁ、特に禁止した覚えが無いので、これを問題視するのは後出しになるんだけど。



 しかし、一番驚いたのは「人間」と「ゴブニュート(カードモンスター)」の間に子供ができたという事だ。

 これが天然もののゴブニュートであればまだ理解できるけど、ここにいるのは俺の『ゴブニュート・クラン』の一員でしかない。普通に妊娠したことに驚いている。


 『ゴブニュート・クラン』は『ゴブニュート・クラン』同様、時間経過で数が増える。1ヶ月に1人増えていく。

 この時、妊娠などはしていない事を確認済みだ。本当に時間が経つとゲームの様にポップする。追加で召喚されるのだ。


 そのゴブニュートが普通に妊娠したというので、かなり驚いたわけだ。



「駄目、なのか?」

「いいや。結婚そのものは駄目とは言わない。ただ、驚き過ぎただけだよ。

 それよりも、おめでとう、だな。終」

「そうか! うん、ありがとう、ご主人」


 驚きで俺が固まってしまったのを見て、終が不安そうにしていた。


 結婚そのものは否定的に考えるより肯定的に考えるべき事なので、気を取り直した俺が普通に祝福すると、終は破顔し嬉しそうにしている。

 隣に立つゴブニュートも嬉しそうで、終に寄り添っていた。





 それにしても。

 これは俺の命令とは関係ない所で、フリーマンの影響が出ていると見ていいのかな。

 俺から命令しただけだと機械的というかシステマチックに動くだけの連中が、フリーマンという外からの影響により人間的になる。


 俺自身、ゴブニュートにはそこまで悪い扱いをしていないし、俺の持つ常識を共有し人間的な生き方が出来るようにと配慮しているつもりだ。

 ……仕事はブラック(年中無休)かもしれないが。それでも、誰も飢えないようにとか考えていたわけだよ。


 これは、外部の刺激がカード能力を超えているっていう、その証明にならないだろうか?

 もしかしたら、産まれてくる子供はカードモンスターの枠から離れた、新しい命になるかもしれない。



 心情的には、カードの枠から離れていて欲しいと思う。

 新しい命なのだ、祝福されて(自由で)いて欲しい。


 結果が分かるのは……いつ頃だ?

 そういえば、ゴブニュートの妊娠期間って、どれぐらいなんだ?

 人間とのハーフだと、どんな感じだ?


 ……この問題は、新たな局面を迎えたようである。


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