4-20 塩商人
夏鈴たちの進化で頑張っていたため、季節がいつの間にか冬の手前になっていた。
元が☆☆☆だからね。進化に必要な魔力が多かったんだよ。
こればっかりは、仕方がない。
さて。夏鈴に頼まれた潜入部隊だけど、商人を装ってもらう事にした。
具体的には塩商人だね。
確認してみたけど、塩の売買は特に制限がかかっていないので、新規参入も問題ないらしい。
問題は運搬とそれにまつわるその他準備で、とにかく塩を運ぶということ自体が難度の高い任務らしい。
大量に運ぼうと思えば畜力か人力か、どちらにしても大変だし、湿気の問題や輸送中の盗賊襲撃にも備えて護衛を要したりと、とにかく大変らしい。
野営って、俺みたいなのがいないと野営用の荷物の運搬もしなくちゃいけないし、どうしても大所帯になってくる。
そこまで大変だからわざわざ制限を設ける必要が無く、好きに運べばいいということらしい。
この世界、行商人はハイリスク・ハイリターンな仕事というわけだ。
実際、塩の値段の8割は運搬費用である。買うと、ぶっちゃけかなり高い。
物の準備に関しては俺が行う。
荷車や運搬に使えそうな馬、野営の道具類に塩以外の売却物。あとは酒を売って作った塩の購入資金。
ありがたいことに穀類は自生している物がかなり採れるし、多少売ったところで問題ない。
ついでに畑以外で育てた蕎麦などもあるし、売り物はこれでいいだろう。
穀類なら備蓄以外に余剰があったところで酒にすれば済む話なので、信用以外を理由に買い手が付かないという事も無いはず。
最初は買い叩かれて構わないから、とにかく“名前を”売ることを目的にすれば失敗は無いと思いたい。
他には現地で買い物したり売却をしたりと、適当に動いていいと裁量権も与えておいた。
行商だからね、途中で売るだけじゃなくて購入もしないと、結局は信用して貰えない。売るだけの連中はどれだけ経とうが余所者のままなのだ。買う人間じゃなきゃ、地元に根を張れない。
アドバイスは全部、神戸町の住人の方々からである。
塩の売買の相談をしたら、懇切丁寧に教えてくれた。
ついでに、色々と買わされた。
酒を売って町の金を持っていくのはいいが、その分は神戸町にも還元しろって話だねー。塩じゃなくて良いから何か持って来い、町の何かを持って行けという話だ。
商隊のリーダーには『ヒューマン・メイジ』改め『ヒューマン・チーフ』が受け持ち、『ヒューマン・スレイブ・パーティ』2つが部下として付く。
金貨袋でも合成すればマーチャントやキャラバンになったかもしれないけど、金貨を作ることはこれまでしていないし、手持ちの金貨はかなりカツカツなので消費したくない。
金貨をカード化した場合、以前の貴金属買取店店主(雄)みたいなのに金貨が偽金扱いされたら大問題なのだ。ここは慎重に動いているよ。
帳簿とかを作ったら、ごうせいアイテムとして使えるのかな?
帳簿なんて付けたことないけど。家計簿ぐらいしか記録は残していないよ。
その場合は、合成先は主婦になるのかなぁ。……さすがに無いか。
準備が完全に終わった頃には冬の真ん中あたり。
これから出発するのは無謀を通り越して阿呆のする事だから、春になってから動いてもらおうかな。