4-19 進化の小細工
凛音が魔法を使い、魔術部隊の連中がそれから学ぶ。
実践を通しての訓練は原始的だが、一応の効果が見られるので重宝している。
文献などによる知識の習得は、こちらに経験が無く、明文化されていないため、今のところ行う方法がない。
これからのために分かっていることを記録している最中なのだ。
十年後ぐらいには俺たちが残した文献を元に、効率の良い魔法習得のための手順が……できているといいな。
今回、俺は三人娘の進化にあたり、小細工をした。
簡単に言ってしまえば、装備の更新による合成強化だ。
最初に夏鈴が進化した時は、服やナイフが合成された。
ここから考えると、モンスターが進化する時にはアイテムの合成も同時に行われると見ていい。
だったら、良い物を装備させたりしておけば、それだけ夏鈴たちの強化も同時に行われるのだろう。装備するものが強ければ強いほど、彼女らに補正がかかるはず。
そう考えた俺は、いくつもの装備品を先に作った。
『木の指輪』 + 『純金』 = 『金の指輪』
『金の指輪』 + 『魔晶石』 = 『マジックリング』
ベースにする金属や付ける石にはいくつか変化はあるけど、指輪系の装備品を量産した。
『~晶石』という属性強化アイテムは一通り、台になる金属は金と銀。さすがにミスリルとか、ファンタジー金属はまだ作れていない。
『ヒールリング』など、この手のアイテムは分かりやすくていいね。
一部のスペルカードは量産ができないので、この手のリングを作るのはとうぶん無し。
今回だって、かなり無理をした。
計算の結果、金属や晶石系アイテムはコピー品を作るより一から作った方がコスパがいい事が分かっている。
ただ、それでも一つ作るのに数日かかるので、リング系アイテムは本当に重要な局面でしか作らないよ。
鍛冶師、早く用意したいよ……。
他に用意したのは、杖と服と小物。
『魔法使いの杖』は『木の杖』をベースにしているので、それも金属に変えてみた。あと、意味も無く宝石による装飾を追加。
獣の骨を使うタイプの装飾は古代宗教やシャーマン的ではあるけど、今回はパス。三人娘とはイメージが違うので。
服の方には刺繍を施した。こちらは神戸町への発注である。
金糸などをこちらで用意し「ハッタリがきくよう、なんか偉そうで魔法使いな服を」とお願いしたら、引き受けて貰えた。
お代には蜂蜜一瓶と日本酒モドキを樽で用意したところ、二つ返事どころか、食いつくような勢いで協力してくれたよ。
甘味と酒は、いつの時代も強い。
最後の小物は『本』である。
紙は和紙なら簡単に買えるので、俺が色々書いて紐で綴じた物を渡した。表面がデコボコの和紙に鉛筆で書くのは大変だけど、頑張った。
あと、小ネタ。
『和紙の本』 + 『リトルファイア』 = 『火の魔術書の断片』
『火の魔術書断片』:アイテム:☆☆☆:中:1ヶ月
火の魔術を使う物に力を与える書物。火に関する知識が収められている。しかし、情報が少なく、不完全である。
火について色々と書いた数枚の紙を綴じてから、火の魔法を足したらこうなった。火とはどんな物かとか、どうやって火を熾すとか。そんな知識。
全く関係ない知識を書いてもこうはならない。必要なのは火に関する情報だけだ。
医学書とかね、そういったのは手に入らないけど、人体に関する本とかあれば回復魔法系の断片もできるんだろうけど、俺の知識不足。回復魔法系のアイテムはできなかった。
割とではなく、かなり凹んだよ。
もしかしたら、書くべき内容が駄目なのかもしれないけどさ。うん、残念。
書物系のアイテムは、強化しても中身が増えるなんて事は無い。
書いてあることは、ずっとそのまま。
こればっかりは、俺が学んで賢くなるしか道はないようだ。
夏鈴たち三人娘はかなり強化されたけど、こんな小細工もしていたという、そういう話さ。
そうしてもう一個。
進化には本人たちの経験も影響していたわけだけど。
それは、そのうち考えればいいかな。