4-11 箱庭の侵入者③
「そこのお前! 僕にこんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
「痛いよう……。もうやだよ……」
話を聞いてみようと、まず縛られている二人に声をかけてみた。
片方は俺を威嚇し、もう片方はすでに心が折れている状態だった。
この辺のリアクションは常識の範囲内なので、特に気にする事でもない。
ただ、こちらとしては話し合い、情報収集がしたいだけなので、友好的に振舞ってみるかな。
「さて、侵入者諸君。こちらとしては冷静な話し合いがしたいんだが、大丈夫かな?」
友好的って何だろう。
縛られ転がされた二人に対し、つい、上から目線の嫌味なキャラを演じてしまった。
思考する時間が足りなかったかな。
俺の中で準備ができていなかったようだ。
「これだけボコボコにしておいて、何が話し合いだ! この野蛮人め!」
「いやいや。大人しく捕まろうとしなかった、投降しなかった人間を捕まえるのに必要な措置だったと聞いているがね。そうやって転がされる前に、自分たちが何をして、何を言ったのか考えてみなさい。
この扱いは適当なものだよ」
「ぐっ……」
捕まえたゴブニュートから聞いてみた話では、こいつら、わざわざ柵を越えて侵入して人の家を荒らしていたという。
ぶっちゃけ、ただの泥棒だ。
村にも監視の連中はいたけど全周囲を完璧に見張れるほどの人員はいないから、彼らはそれに気が付けず、家人が帰ってきた事で侵入が発覚したのだ。
こいつらの体格が良い事もあり、ただのゴブニュートだと一対一ではぶっ飛ばされてしまうようで、フリーマンに取り押さえられる前までに、こちらにも怪我人が結構出た。
そう考えると、強盗みたいなものか。どちらにせよ、ろくでなしは間違いない。
「このあたりは、うちの村の縄張りだぞ! お前らの方こそ、勝手に住み着いた悪者じゃないか!」
「知らんがな。ここ、元はゴブリン村だぞ。お前らは自分の村でゴブリンを放し飼いにしていたのか?」
「そ、そうだ!」
「人間が捕まってたのに?」
「あれは! ただの犯罪者だ! ゴブリンどもに与える餌なんだぞ!」
強気の少年は、会話は一応成立するけど、頭の回転が速いタイプじゃなさそうだ。
怒られた子供そのものの対応で、とりあえず何か言い返す、言い訳してしまう性格なんだろう。言った後に「しまった」とか「嘘がバレないだろうな?」と考えているのがよく分かる。
殺すほど邪悪ではないが、素直にごめんなさいが言えないクソガキだな。条件反射的でとっさの言い逃れをするにしても、発言がゲスいし。
こりゃあ、こいつからは実りのある言葉は聞けそうにないかな。
これなら隣の子供と話した方がまだマシだろう。今は泣いてばかりで会話が成立しないけど、怪我を治せば何とかなるか。
っと、その前に。
「一助、何人か使ってこっちの煩いのを牢屋に入れておいてくれ。縄はもちろんそのままだぞ」
「は!? テメエ! 離せよ!!」
「うっす!」
俺が魔法を使えるのを、クソガキに教えてやるメリットは無い。
精神的に折るためにも、連れとは引き離しておこうかな。