4-10 箱庭の侵入者②
急いで村に行ってみると、二人の少年が縄で縛られていた。
年齢で言えば中学生になったばかりぐらいに見える。
どちらも体格が良く、活発そうな印象を受けた。
ただ、全身に暴行が加えられた形跡がある。
というか、加えたんだろうね。こうやって捕まえるまでに。
治す手段はあるにはあるけど、こんなのに使う余裕は無いので、放置でいいだろうと判断したみんなは偉い。
うん。
どう見ても跳ねっかえりの子供が、大人の言う事を聞かずゴブリン村に突撃したんだろ。これは。
あまりのくだらなさに、俺は呆れるしかなかった。
とはいえ、村に人間がやってきてしまったのは事実だ。
早急に対応しないといけない。
候補は3つある。
後腐れなく、処分する事。
これが大人であれば、まだ何となく別の対応を考えたんだけどね。もしかしたら、近くの村からゴブリン村の偵察に来て、っていう流れかもしれなかったから。
その時はその時で難しい対応を迫られただろうけど、子供が来たっていうんじゃねぇ。間違いなくそういうのとは違うだろ。
大した情報も与えていないだろうから、そのまま返す。
この場合、俺たちがここにいる事だけはバレてしまう。ゴブニュートの情報が漏れるのはしょうがないと諦められるなら、これでいいかな。
まぁ、ありえない話だけどさ。
最後に、説得してこちら側に引き込む。
この子らが信用できるかどうかで言えば、全く信用できない。
敵でも味方でも、この手合いは人の言う事を聞かないのがデフォルトだからさ。考えて動かなきゃいけない事を出来ないと割り切るしかない。だから、この村で拘束するって話だね。
逃げ出すようなら殺すって脅したところで逃げるタイプだろうから、これもできればやりたくない。
考えてみると、殺すのが一番簡単で、安全なんだと思う。
生かしておくメリットが無く、デメリットばかり。
殺す方のデメリットは、俺の精神的なお話だけだ。子供を殺すのを我慢するかどうか、という事。
ちょっとだけ、考えてみる。
あんまり殺したくはないよね。
自分が善人だと言う気は無いけどさ、悪人とも言いたくないんだよね。
中途半端な凡人が、俺の本質なんだと思うよ。
これが殺しにかかってきた連中であればまだ心を決めることもできるけど、そうでないならやっぱ無理だ。殺したくない。
放置すれば俺たちの安全を脅かす事は分かるんだけどね。でも、そこで冷徹に振る舞えるほど、俺は強くない。
クソガキっぽいからね。鉄拳制裁ぐらいは気にせずやるけど。
けど、殺すまで割り切るのは違うだろ。
少なくとも、俺はそう思う。
じゃあ、どうするか。
まずは話し合いだね。
ファーストコンタクトがどんなのだったかの確認もまだしてないから、仲間とこの子ら、どちらからも話を聞いて、それから考えるか。
もっとも、殺した方がいいタイプのクソガキだった場合、子供でもやってしまう覚悟は持っているよ。
よく見れば片方はいい服を着ているからさ。
選民思想を持っていた場合は子供でも…………。