4-7 農園④
農作物。作ったのなら、食べるだけ。
こうやって素人ながら農業を始めた俺だけど、できた作物を食べる事には喜びを感じる。
達成感があり、それを他の誰かと共有できれば、なお満足できる。
夏鈴たちにゴブリン村のみんな、神戸町の人々。
笑い合えるっていうのは良い事だ。
採ったばかりのトマトを氷水で冷やし、かぶりつく。
多少の青臭さはあるけど、程よい酸味と甘みが口の中に広がる。
ドロリとした部分は人によって好き嫌いが分かれるけど、俺はそこも美味しいと思うよ。
「うん、美味い」
大豆やトマトは作付面積を広めに確保している。
大豆は醤油や味噌の原料だし、トマトはケチャップを作るのに必要だからだ。
料理して食べるというより、調味料の原材料として見ていたりする。
ナポリタンとかね、好きなんだよ。喫茶店のナポリタン。
鉄板の上で、最後に溶き卵を流し込んであるアレが食べたいんだよね。思い出したらどうしても食べたくなった。
幸い、材料だと思うものが手元にあるので、その為に頑張っているわけだ。
ピーマンや玉ねぎもあるし、タバスコに使う唐辛子は無いけど、頑張れば、何とかなるはず。
ケチャップって、トマトを潰して酢と塩で味付けすればいいんだったっけ? さすがに材料まで覚えてないよ。
他に何が必要だったっけ?
人間、生きていく上で何かしらの目標は必要だと思う。
みんなで笑えるように、少しでも上の生活を目指せるようにと。
普通に考えたら、そのうち結婚して、子供を作って育てて、いつかは孫に囲まれて大往生が理想なんだろうか。
全然ピンと来ないんだけど。
今のところ俺の目標は食い物関連ばかりで、何か食べたいと思うものを再現することに拘っている。
尾張まで海の幸を買いに行ったのもその一環だ。
夏鈴たちは魚があんまり好きじゃないみたいだけど、俺が独り占めできると思えば悪くはない。
こっちは気の長い話になるけど、いつかはカレーを作ろうとか考えていたりもしている。
スパイス、全然手に入らないけど。
そもそも日本じゃ手に入らないスパイスも多くあると思うけど。
そこは、カード能力で無理矢理作ってだね。日本でも作れる品種にしちゃえばいいと思うんだ。
スパイス、カレーリーフだっけ? カレーの匂いがする草。
あれと唐辛子と、ターメリック。他に何を混ぜればいいか全く分からないけど……。
どこか、名前だけでいいから文献とか残っていないかな。
今は指針すらないので、気持ちが空回りしているよ。
遠い目標は横に置いて、近い目標は醤油や味噌の製造だ。
もうすぐ大豆が手に入るから、これを使って練習してみよう。
醤油や味噌って、作るのに蔵が必要なんだけど、これはまだ、ただのボロ小屋なんだよね。
もっとこう、神戸町の職人さんで見せてもらったような立派な蔵を建ててみたい。
やることが多いなぁと思いつつ、やりたい事が多いのは良いことだって自分に言い聞かせ。
今日も一日、頑張りますかね。